ノワールの体が黒い炎に包まれ、彼の顔は次第にその闇に引き込まれていった。

 「ノワール!」

 セレナは駆け寄ろうとしたが、闇の魔力が立ちはだかる。闇の王は冷笑しながら、彼女を見つめていた。

 「無駄だ、光の魔法少女よ。お前がいくら叫ぼうと、この子はもう我がものだ。闇の力に飲み込まれたのだよ」

 「そんなことない!」

 セレナは杖を握りしめ、力を込めた。

 「ノワールにはまだ心がある!私は信じている!」

 その時、リリアがセレナの肩を掴み、強い目で言った。

 「セレナ、彼の中に何かあるわ。あの闇は彼を完全に支配しているわけじゃない!」

 「でも……どうすれば!?」

 「彼の心の中に残っている光を見つけ出すのよ」

 セレナは深く息を吸った。闇の王が魔力を高め、さらにノワールを圧倒しようとしたその瞬間——

 「ノワール!」

 セレナの叫びが空間を震わせ、彼女の魔力が一気に高まる。星のように輝く光が、闇の中に差し込んだ。

 「私と一緒に、闇を乗り越えて!」

 ノワールの目が一瞬、揺れた。闇の力が彼を支配しようとするが、その中にわずかながらも光が見えた。

 「セレナ……」

 ノワールの声がかすかに聞こえ、彼の手がわずかに動いた。

 「俺は……」

 闇の王は怒りのあまり、魔力を爆発させた。

 「邪魔するな!お前たちの望みは無駄だ!」

 その瞬間、ノワールの目が完全に開かれ、闇の力が爆発的に反発した。黒い炎が引き裂かれ、ノワールの体から光が漏れ出す。

 「……お前たちが何者かは関係ない。俺が選ぶのは、俺の意思だ!」

 その言葉とともに、ノワールは黒い魔力の束縛を振り払った。

 「ノワール!」

 セレナが叫ぶと、彼は彼女に向かって手を伸ばす。その手のひらには、青く輝く星のような光が灯っていた。

 「俺は……」

 ノワールの言葉が切れた。闇の王の顔が歪んでいく。

 「貴様、何を……」

 その時、ノワールの体が再び光に包まれ、闇の王の力が一瞬で打ち砕かれた。闇の王は悲鳴を上げながら後退する。

 「まさか……こんなことが……」

 その瞬間、闇の王の姿が消え去った。残されたのは、深い闇の中でただ静かな空気だけだった。