ノワールと共に進むセレナたち。闇の森の奥へと進むにつれ、空気はさらに重くなり、周囲の木々はまるで朽ち果てたように黒ずんでいた。

 「この森……まるで何かが浸食しているみたい」

 リリアが不安げに呟く。セレナも同じ感覚を抱いていた。まるでこの森自体が「闇の王」の力によって蝕まれているかのようだった。

 その時——

 ギィィィィィ……

 不気味な音と共に、森の奥から黒い影がいくつも現れた。それは人の形をしているが、目も口もないただの「闇」だった。

 「シャドウ……!?」

 リリアが驚きの声を上げる。シャドウとは、闇の魔力から生まれる怪物。この世界を蝕む存在だ。

 「来るよ!」

 セレナは杖を掲げた。

 「スターライト・ブレイザー!」

 星のように輝く魔法の矢が放たれ、シャドウの一体を貫く。しかし、残った影たちはまるで意志を持つかのように形を変え、次々と襲いかかってくる。

 「くっ……数が多い!」

 リリアも防御魔法を展開するが、押し切られそうになった。その時——

 「……どけ」

 ノワールが前に出た。彼の手に黒い剣が現れ、闇の波動が広がる。

 「ナイトフォール・スラッシュ!」

 彼が剣を振るうと、黒い波動がシャドウたちを一閃し、一瞬にして消滅させた。

 「すごい……」

 セレナは驚いた。彼の力は確かに「闇」だ。しかし、それはシャドウたちのような純粋な邪悪ではなく、どこか理性的なものだった。

 「お前……闇の力を使えるの?」

 「……ああ。でも、俺自身もよく分からないんだ」

 ノワールは複雑そうな表情を浮かべる。

 その時、彼の胸元から小さな光が漏れた。セレナがよく見ると、それは半分に割れたペンダントだった。

 「それ……!」

 セレナは驚いた。彼女の持つ魔法のペンダントと、形がそっくりだったのだ。

 「まさか……ノワール、あなたと私は——」

 言いかけたその時、突如として森の奥から冷たい声が響いた。

 「ようやく見つけたぞ、ノワール……」

 闇の霧の中から現れたのは、漆黒のローブを纏う男。セレナが昨夜遭遇した存在だった。

 「……闇の王……!」

 男はゆっくりと歩み寄ると、ノワールをじっと見つめた。

 「さあ、戻るのだ。我が『闇の継承者』よ」

 「……っ!」

 ノワールの目が揺れる。

 「どういうこと……?」

 セレナは彼の横顔を見た。すると、ノワールは苦しそうに拳を握りしめる。

 「俺は……本当に、お前たちの味方なのか……?」

 その言葉に、セレナの胸が痛んだ。

 ノワールは何者なのか?
 彼は敵なのか、それとも……?

 セレナは迷いながらも、強く言った。

 「私は……あなたを信じる!」

 闇の王が冷笑する。

 「愚かな少女よ。ならば、お前も闇に堕ちるがいい……!」

 その瞬間、世界が黒い光に包まれた——。