闇の星の消滅により、セレナたちは一度は平穏を取り戻したかのように感じた。しかし、その平穏も長くは続かなかった。闇の星が崩壊したことは、確かに大きな一歩だったが、セレナの心には不安が残っていた。リリスの言葉通り、闇の力は完全には消え去っていなかった。

 「闇の力が消えたと思ったけど、まだ感じる……」

 セレナが遠くを見つめながら呟くと、リリスもその言葉に同意するようにうなずいた。

 「私も感じる。まだどこかに暗黒の波動が残っている。あれは、闇の王の力だ」

 ノワールが剣を肩にかけ、冷静に言った。

 「もし闇の王が完全に消えたのなら、こんな波動は感じないはずだ。どこかに隠れているんだろう」

 その時、セレナのペンダントが再び激しく反応し始めた。ペンダントが光り輝き、セレナの手に熱を帯びる。

 「これは…?」

 セレナは驚きながらも、その感覚をしっかりと受け入れた。ペンダントから伝わる力は、闇の王の存在と同じように感じられた。

 「セレナ、大丈夫?」

 リリスが心配そうに声をかける。セレナはペンダントを見つめながら、ゆっくりと答えた。

 「大丈夫、リリス。これは、きっと新たな手がかり。闇の王がまだ何かを企んでいるのかもしれない」

 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、突然空が暗くなり、周囲の空気が重くなった。セレナたちの足元で、何かが動いているような気配を感じた。

 「また来たのか?」

 ノワールが剣を構え、周囲を警戒する。

 その瞬間、前方に闇の中から現れたのは、見覚えのある人物だった——闇の王の使徒、カナリア。彼女の目は、以前のような冷徹さを湛えておらず、どこか狂気を含んでいた。

 「カナリア……」

 セレナが驚きながらも、呼びかけた。

 「どうしてあなたが…」

 カナリアは冷笑を浮かべながら、セレナに向けて一歩踏み出した。

 「セレナ、貴女が闇の星を倒したと思っているの?」

 その声には明らかな嘲笑が混じっていた。

 「闇の王は確かに倒れた。しかし、彼の力は私の中に引き継がれている。あの星はただの前菜に過ぎない。私が本当の闇の王となるのよ」

 リリスがその言葉に反応し、驚愕の表情を浮かべた。

 「まさか…カナリア、お前が闇の王の後継者だったのか!」

 カナリアはうなずき、ゆっくりと手を広げた。

 「そう。闇の王は私の力を引き継ぐ者を選んだ。そして、その者こそが真の闇を支配するのよ」

 セレナはその言葉を受け、強い決意を固めた。

 「カナリア、お前の力がどれほど強くても、私たちは負けない!闇の力を使って世界を支配することなんて、絶対に許さない!」

 「ふふ、どうしてもそう言わずにはいられないのね。でも、貴女のその光もすぐに消えるわ」

 カナリアが手を振り上げると、彼女の周囲に黒い霧が立ち込め、空間が歪み始めた。その霧の中から、無数の闇の使者たちが現れ、セレナたちに向かって襲いかかってきた。

 「これは…!」

 セレナがすぐに杖を構え、反撃の準備をする。

 「みんな、守って!」

 ノワールが剣を振り上げ、リリスも魔法を展開する。闇の使者たちの攻撃を防ぎつつ、セレナはペンダントに込めた星の力を解放しようとした。

 「スターライト・エクスプロージョン!」

 セレナの光が闇を貫こうとしたその時——

 「それでも、私の力には敵わない!」

 カナリアが叫び、暗黒の波動がセレナの光を打ち消す。

 「くっ……!」

 セレナは力を振り絞り、再びペンダントの光を強くした。だが、カナリアの暗黒の力は、予想以上に強力だった。

 「まだ足りないわ、セレナ。貴女の力では、私を止めることはできない」

 カナリアの言葉に、セレナは思わず立ち止まる。だが、その時、彼女の胸の中に新たな決意が湧き上がった。

 「私が信じる力を、私は絶対にあきらめない!」

 セレナはペンダントを握りしめ、全力を振り絞った。

 「スターライト・オーバードライブ!」

 その瞬間、セレナの周囲に無数の光が集まり、全てを貫くような輝きが爆発的に放たれた。闇の使者たちはその光に打たれて消え去り、カナリアもその輝きに一瞬目を眩ませた。

 「これで終わりだ!」

 セレナは最後の力を込めて、カナリアに向かってその光を放った。