翌朝、僕たちは王都に帰るために屋敷前に集まりました。
 僕たちの前には、代理当主になった嫡男夫人が赤ちゃんを抱いていました。
 赤ちゃんの前にはドラちゃんが飛んでいて、赤ちゃんも手をバタバタさせながらキャッキャしていますね。

「皆さま、色々とご迷惑をおかけしました。お陰さまで、領内も安定しました。これから、領民のための統治を行いたいと思います」
「こちらこそ、突然の対応になったことを詫びないとならない。しかし、邪神教絡みは国の最重要事項だ。その点は理解頂きたい」
「私も、理解しております。もし暗黒魔法が発動したらと思うと、ゾッとします」

 ヘンリーさんから暗黒魔法について説明を受けていたのか、代理当主の嫡男夫人は少し顔を青くしていた。
 僕たちとしても、酷いことになる前に対応できて良かったと思っている。
 もしかしたら、事件の首謀者は暗黒杯と暗黒魔法がとんでもない被害を及ぼすことを伝えていないのかもしれない。
 じゃないと、催眠状態じゃないのに、こうも簡単に暗黒杯に手を出すとは思えないよ。
 この辺りはヘンリーさんたちも疑問に思っているそうで、捕らえた領主夫妻と嫡男の聴取結果を待たないと駄目ですね。
 では、そろそろ時間なので、僕たちは王都に戻ります。

 シュイン、ぴかー!

「グルル!」
「おー!」

 目の前で大きくなったドラちゃんに、赤ちゃんは一層手足をバタバタさせながら大興奮しています。
 またもや町の子も集まってきているし、やっぱりドラゴンって子どもたちの憧れなんですね。
 僕たちは、ドラちゃんの背中に乗り込みました。

「それでは、我々はこれで失礼する」
「皆さま、道中お気をつけて」
「あー!」
「「「ばいばーい」」」

 バサッ、バサッ、バサッ。

 集まった子どもたちも手を振る中、僕たちを乗せたドラちゃんは一気に空高く飛び上がり、王都に向けて飛んでいきました。
 二泊三日の遠征だったけど、色々な事を勉強できたね。
 そしてあっという間に王都に着いて、王城について今回の遠征の報告をします。

「二家の状況を確認すると、どうも資産状況は良いのに更に欲をかいたから邪神教に手を出したと見える。逆に領地経営に余裕がないところは、邪神教に手を出す暇もないというところか」

 陛下は、会議室で僕たちの話を聞いた上で色々と考えを巡らせていました。
 サンプル数が少ないので何とも言えないけど、軍の調べによるとベストリア領とナイル領の周辺領地では不正は確認されなかった。
 これからも調査は続けるけど、後は領主本人の資質によるものも大きそうです。

「しかし、次はどの貴族が対象になるやら。分析結果を待つ事になるが、心情としては捜査対象の貴族が増えて欲しくない」
「私も同感です。しかし、いくつかの家は対応しなくてはならないと思っております。一気にはできないので、順に対応する事になりますが」
「自首する貴族家には、爵位の維持などの減免を認める通知を出す。果たして、上手くいくかどうかだな」

 ヘンリーさんの考えを聞いて、陛下も追加の対策を取る事になりました。
 既に邪神教関連は禁止するという通知は出しているので、再度禁止するという通知を出しても効果は薄いと思います。
 この後は関係者が残って話し合いをする事になったので、僕たちはナンシーさんとともに屋敷に戻る事になりました。

「ねーね、にーに、おかえりー!」
「ただいま、セードルフちゃん」
「ただいま、お迎えありがとうね」

 屋敷につくと、リーフちゃんを頭に乗せたセードルフちゃんが笑顔で出迎えてくれました。
 本当に、セードルフちゃんは元気いっぱいですね。

「二人とも、お帰り。部屋で休んだらどうかしら?」

 そして、セードルフちゃんと一緒にイザベルさんも顔を見せてきました。
 もうそろそろ出産なので、お腹もとっても大きくなりました。
 セードルフちゃんも、お兄ちゃんとしてお母さんを気遣ったりしています。
 もう、赤ちゃんが産まれるのが待ち遠しくて仕方ないみたいですね。
 僕とナンシーさんは自室に戻り、スラちゃんとドラちゃんはセードルフちゃんについていきました。
 僕も、少し休んだらセードルフちゃんと遊んであげよう。