バタバタバタ。

「おい、どうした。何があった?」
「レオのオオカミが、教会入り口で大声で吠えていたぞ」
「なんじゃこりゃ? 教会の壁が焦げているぞ?」

 程なくして、教会の中から多くの人がやってきました。
 ギンちゃんも一緒に来たけど、目の前で拘束されている三人を見てビックリしていました。
 因みに、村の人が来る間に魔法での拘束に加えてエミリーさんとナンシーさんが厳重に縄で拘束していました。

「ナオ、これはどうしたんだ?」
「一昨年収穫祭を邪魔したあの三家の三人の女性が、教会を放火しようとしたんです」
「「「はあ!?」」」

 僕が村の人に事情を説明すると、みんな素っ頓狂な声をあげちゃいました。
 そして、揃った動きで拘束されている三人の姿を見たのです。

「僕が鑑定して確認しました。キキちゃんも確認したので間違いないかと」
「そういえば、前に見た時の顔のほくろの位置が一緒だな。しかし、折角出所したのに馬鹿な事をしたもんだ」
「ぐっ……」

 拘束された三人のうちの一人が悔しそうにしているけど、そういえば泣きほくろがあったっけ。
 更に、凄い事をエミリーさんが教えてくれました。

「そういえば、この三人は刃物を手にして襲ってきたわね。反逆罪も適用になるレベルだわ」
「「「はっ!?」」」

 エミリーさんの発言を聞いた拘束されている三人は、何が何だか分からないという表情をしていました。
 それに対して、集まっている村の人は思わずあちゃーって表情をしちゃいました。
 村の人は、僕たちが悪代官とあの三家の人を捕まえた時にエミリーさんとナンシーさんと顔を合わせています。
 なので、二人がどんな立場の人なのか分かっています。
 そして、この人も姿を現しました。

 ズゴゴゴゴゴ……

「あなたたち、いったい何をしているのかしら……」
「「「ひぃ……」」」

 まだウェディングドレスに着替える前のサマンサお姉ちゃんが、もの凄い怒気を放ちながら三人の前に仁王立ちしました。
 うん、サマンサお姉ちゃんは僕でも怖いくらい怒っていますね。

「教会に放火するばかりか、王国王女のエミリー殿下と第二王子妃のナンシー殿下に刃物を向けるとはね。王国に喧嘩を売るのと同罪ね」
「「「えっ……」」」

 サマンサお姉ちゃんの話を聞いた三人は、信じられないって表情をしながら顔を真っ青にしていました。
 思わずエミリーさんとナンシーさんの方を向いたけど、二人ともニコリとしながら王家の証を見せています。
 そして、ある意味ラスボス的な存在が姿を現したのです。

 ズゴゴゴゴゴ……

「ふふふ、いったいここで何をしようとしたのかしら? まあ、自分は幸せになれないのに幸せな娘の結婚式を台無しにしようとしたのでしょうね……」
「「「あわわ…」」」

 これが、蛇に睨まれたカエル状態なんですね。
 お母さんから放たれるとんでもない威圧に、三人はがくがくぶるぶると震えています。
 その間に、僕は通信用魔導具で各所に確認を取りました。
 というのも、反逆罪に問われる可能性がとても高いので、このままバンザス伯爵に引き渡していいのか判断できなかったからです。
 すると、直ぐに返事が返ってきました。

「えーっと、三人は王都の軍の施設に運ぶ事になりました。反逆罪の現行犯で、重犯罪者用の牢屋に入れて厳しい取り調べを行うそうです。バンザス伯爵へは、陛下から連絡するそうです」
「「「ははは……」」」

 僕が通信用魔導具に表示された内容を伝えると、三人は真っ青を通り越して真っ白になっていました。
 でも、この場にいる人全員が三人に全く同情していませんでした。

「ギュー」

 バサッ、バサッ、バサッ。

 直ぐに、大きくなったドラちゃんが三人を手でつかんで飛び立ちました。
 説明の為にスラちゃんも同行しているので、スムーズに話が通じるはずです。
 三人が持っていた証拠品も、スラちゃんがアイテムボックスに入れて持っていきました。
 その間に、教会の壁に出来た焦げた跡を生活魔法で綺麗にします。

 シュイン、ぴかー。

「ふう、とりあえずこれで大丈夫です。しかし、本当に馬鹿なことをしました」
「そりゃしょうがないだろう。馬鹿なのだから、俺らでは奴らの考えは全く分からん」

 村の人は、吐き捨てるような言葉で三人を評していました。
 何だか、とっても後味の悪い感じですね。