「はあ、緊張しました……」
「ははは、全然緊張しているようには見えなかったよ」

　一足先に応接室に入り、僕は思わず緊張の糸が切れちゃいました。
　ランディさんだけでなく、他の人たちもガクリとした僕を見てニコリとしていました。
　なんだかんだ言って、いつも色々な視線を浴びるのは大変です。
　負けないように気を張っていたけど、直ぐに疲れちゃうんだよね。
　ちょっと休憩してから、僕は紅茶を飲みました。
　あー、紅茶が美味しいよ……

　ガチャ。

「ナオよ、まだ緊張から解放されるのは早いぞ。なんせ、婚約披露パーティーを開かないといけない」

　僕の心の声を聞いたかのように、王族が応接室に入ってきました。
　もちろんエミリーさんも一緒に入ってきて、ニコニコしながらいつも通り僕の隣に座りました。

「ナオはまだ屋敷を受け取ってないが、そろそろ準備してもいいだろう。春先にブレアとナンシーが屋敷に移るから、その後になるだろう。新しい屋敷のお披露目を兼ねて、婚約披露パーティーだな」

　な、何だか物凄い勢いで色々なことが決まっていきます。
　しかも、屋敷の大きさはブレアさんとナンシーさんに下賜されるものと同じくらいの大きさだそうです。
　ヘンリーさんとシンシアさんの屋敷もとても大きかったけど、それに近いくらいの大きさだなんてびっくりしちゃいます。

「そうなると、屋敷の使用人の陣容も決めないといけないですな。ナオ君の専属侍従のリルムはそのままナオ君付きにし、信頼のあるところから集めないとなりませんな」
「なら、ブレアとナンシーの侍従を集める際に一緒に対応しましょう。家格も同じだし、何も問題ないですわね」

　今度は、ランディさんと王妃様がニコニコしながら話をしていました。
　使用人関係は僕にも決められないので、お任せするしかないです。

「ナオ君に縁のある貴族家から、調度品などを贈るのはいいですな」
「うむ、とても良いことですな。教会もナオ君に大変世話になったし、何か贈り物を検討しないとなりませんな。なんせ、国を救った次期勇者様への贈り物ですから」

　マリアさんのお父さんとシンシアさんのお父さんも、ニコニコしながらどんな贈り物をするか話し合っていました。
　な、何だか話がとても大きくなってきた気がするよ。

「わーい、ナオにーにがおにーちゃんになるんだ！」
「なるんだー！」
「ふふ、そうね。ナオ君とは親戚になるのよね」

　アーサーちゃんとエドガーちゃんは、僕との関係が深まってとっても喜んでいました。
　マリアさんの言う通り、二人は僕の親戚関係になるんだね。
　王族とか抜きにして、僕もとっても嬉しいです。
　そんな事をおもっていたら、シャーロットさんがあることを指摘しました。

「エミリーとナオ君は、早くナオ君のご両親にご挨拶に行った方が良いわ。この分だと当分話は続くだろうし、私が一緒について行くわ」
「そうね、その方がいいわね。既に色々と話はしているけど、ナオも陞爵したしきちんとご両親に話をした方がいいわ」

　エミリーさんもシャーロットさんの意見に同意したので、僕も席を立つことにしました。
　というか、僕の目の前でとんでもないことが決まっていくのが何だか怖いです。
　そして、スラちゃんもこの場に残って色々と決めていくと張り切っていました。
　スラちゃんは僕のお兄ちゃん的な存在だからとても張り切っているけど、今日は制御の効かない馬車みたいになっています。

「母上、色々とお願いして申し訳ない」
「いえいえ、孫のためならお祖母ちゃんは頑張るわよ」

　陛下もシャーロットさんに話した後、直ぐに話に加わっていきました。
　ということで、僕、エミリーさん、シャーロットさんは、応接室から逃げるように出ていきました。