早速レガリアさんとリルムさんと一緒に馬車に乗って、目的地の貴族家に向かいます。
 最初は、なんと四軒隣の侯爵家のお屋敷だそうです。
 僕たちが乗った馬車は、あっという間に目的地に到着しました。

「オラクル公爵家夫人レガリア様、並びにカタルシス子爵家当主ナオ様が治療の依頼を受け参った」
「えっ!? お、お入り下さいませ」

 あっ、馬車の御者が門番に説明したら、大慌てで屋敷に向かっちゃった。
 門も普通に通れたし、多分大丈夫な気がします。
 そして、屋敷前に到着すると直ぐに応接室に案内されました。
 ソファーに座ってお茶を飲むと、レガリアさんがびっくりすることを教えてくれました。

「ふふふ、実は私も冒険者登録しているのよ。若い頃は、奉仕活動的な依頼を受けていたのよ」

 レガリアさんは、微笑みながら冒険者カードを見せてくれました。
 おお、レガリアさんがとってもかっこいいですね。
 すると、緑髪ロングヘアの背の高い若い女性が息を切らせながら応接室に入ってきました。
 もしかしたら、嫡男夫人なのかもしれませんね。

「お、お待たせし申し訳ございません……」
「いいえ、私たちが急に来たのですよ。落ち着いてください」
「あ、ありがとうございます」

 レガリアさんは、にこりとしながら若い女性に落ち着くように声をかけました。
 この辺りは、王国を代表する大貴族夫人の余裕と配慮なのかもしれませんね。
 確認すると、やっぱり嫡男夫人でした。

「その、お義母様は医者嫌いでして。昔、下手な治癒師に当たってしまったのが原因だそうです」
「その話は、私も聞いたことがあるわ。病気が治らずに、重症化してしまったらしいわね。でも、ナオ君は王太后様を治療した実績があるし、この国でも指折りの治癒師よ」

 嫡男夫人がかなり心配そうに話していたけど、本当にタイミングが悪かったんだね。
 でも、僕たちなら殆どの病気はしっかりと治療するよ。
 ということで、早速侯爵夫人の治療をすることになりました。
 嫡男夫人の案内で、僕たちは侯爵夫人のいる部屋に向かいました。

 コンコン。

「お義母様、オラクル公爵夫人のレガリア様と白銀の竜使い様が治療に参られました」
「え、ええ!?」

 部屋の中から、かなり驚いた声が聞こえました。
 どうやら、予想外の人物がやってきたと驚いているみたいですね。
 僕たちは、嫡男夫人の後をついて部屋の中に入りました。

「れ、レガリア! なんで、ここにいるのよ?」
「ふふ、久しぶりね。信頼できる貴族でないと治療を受けないという、困った依頼を受けたのよ」

 レガリアさんと同じくらいの年齢の女性が、驚愕の表情でレガリアさんを見ていました。
 しかし、かなり痩せ細っていてベッドから起き上がれません。
 かなり体調が悪そうに見えますね。

「王太后様を治療したかの有名なナオ君がいるから、安心して治療を受けて良いわよ」
「ほぼ無理な依頼を出したのに、まさかとんでもない治癒師を連れてくるとはね」

 侯爵夫人は、レガリアさんに思わず苦笑していました。
 では、早速治療を始めましょう。
 まず初めに、侯爵夫人に軽く魔力を流します。

 シュイン。

 う、うーん。
 これは思ったよりも重症ですね……
 思わず僕の表情が曇ってしまい、僕を見た侯爵夫人は何故かニヤリとしていました。

「白銀の竜使いなら、私の症状は直ぐに分かるだろうね。治らないのは、私自身がよく知っているわ」

 侯爵夫人はもう諦めたような表情をしているけど、治療できないとは言っていませんよ。
 僕はスラちゃんとドラちゃんに視線を向け、そして魔力を溜め始めました。

 シュイン、シュイン、シュイン、ぴかー!

「す、凄い。これが、かの有名な白銀の竜使いの回復魔法……」

 回復魔法の眩い光に、嫡男夫人は手で光を遮っていました。
 レガリアさんは、満足そうに僕たちの回復魔法を見つめていました。
 うん、今はこのくらいですね。

「す、凄い……まるで、生まれ変わったかの様に体が軽いわ」

 侯爵夫人は、使用人の補助を受けて上半身をベッドから起こして驚愕の表情で自分の体を触っていました。
 でも、治療はまだまだこれからですよ。

「今の体力範囲内でできる回復魔法をかけました。ご飯を食べて体力を取り戻したら、再び治療をします」
「そういう配慮もできるとは。白銀の竜使いは、本物の治癒師だね」

 侯爵夫人は、僕の治療の内容を聞いて納得したかの様に頷いていました。
 レガリアさんも、僕の説明を聞いてうんうんと頷いていました。
 ご近所さんってのもあるし、今度は直ぐに治療に行けるね。
 嫡男夫人も、もの凄く丁寧にお礼を言ってくれました。
 これで、一件目の治療依頼が完了ですね。