二週間後、僕は久々に王城に向かいました。
 もう、普通に歩けるし走る事もできます。
 最初は、少し歩いただけでフラフラになっちゃったけどね。
 リハビリで役に立ったのが、ちびっ子たちとの遊びでした。
 みんな全力で走ると中々すばしっこくて、追いかけるのが大変でした。
 今日は僕のお友達も一緒に話を聞くそうで、王城に着いたら会議室に向かいました。

「ナオ、随分と動けるようになったな」

 会議室に着くと、普通に歩いている僕の事を陛下がニコリとしながら話していました。
 陛下以外にも有力貴族や勇者パーティのメンバーもいて、普通に歩く僕のことを目を細めて見ていました。

「皆さんのおかげで、ゆっくりと休むことができました。ありがとうございます」
「ナオの休養は、余が指示をした事だ。たまには休むことも必要だ」

 僕がペコリと頭を下げながらお礼を言うと、陛下も他の人も問題ないと言ってくれます。
 そして、早速話をする事になりました。
 議題は、勿論ハラグロ伯爵に関する事です。

「取り調べの結果、奴はナオに強い殺意を抱いていた。原因はやはりエミリーの事で、ナオが出世していくことにも強い不快感を示していた。王家に取り入っていると思っていたみたいだ」

 陛下がハラグロ伯爵がなぜ僕のことを刺したかという事を教えてくれたけど、とにかく僕のことが邪魔だったみたいです。
 前に僕や家族に危害を加えようとした貴族も、エミリーさんを自分の婿にと考えていたもんね。
 あと、僕は出世したくて頑張っている訳じゃないもんね。

「他にも色々と言っていたが、総じてナオが自分にとって邪魔だったのは間違いない。だが、奴は自称知的派でナオのことをどうにかしようとして自滅した貴族を見ていたのでかなり警戒した。確実にナオのことを殺害しようとして、闇組織から毒を手に入れたという」

 なんというか、僕のことを何としてでも殺害しようという確固たる意志が感じられますね。
 執念の塊というか、凄いですね。

「奴は、ナオを自分の手で殺害する事にこだわっていた。あらぬ事に、奴は常に毒ナイフを携帯していて、謁見などにも持ち込んでいた。そして、披露宴でたまたまナオが転んだ赤ん坊の治療をしたタイミングを狙ったという。アーサーやエドガーなどもナオの側にいたが、奴の目にはナオしか映っていなかった。披露宴だろうが奴には関係ないというわけだ」

 う、うーん。
 かなりひとりよがりの、身勝手な犯行ですね。
 周囲がどんな状況か全く関係なく、自分の目的を遂行する為に犯行に及んだんだ。
 その結果、ハラグロ伯爵の目論見通りに僕を毒ナイフで刺したけど、王家主催の結婚披露宴を滅茶苦茶にした。
 更に、屋敷を捜索したら次から次へと犯罪を示す証拠が出て来て、自分の邪魔になりそうな貴族をリストアップして襲撃計画の実行日まで決めて準備を進めていたそうです。
 更なる毒の入手まで動いていて、犯罪組織に関与した冒険者なども捕まっているそうです。

「奴と組む貴族もいたが、資金提供程度だった。しかし、奴は計画を練って実行に移していた。この後裁判を行うが、積み上がった罪状から最低でも終身刑で死刑も普通にありえる。それだけの罪状を、奴は行なったのだ」

 陛下がハラグロ伯爵の求刑内容について教えてくれたけど、普通に考えれば死刑になるだろうと言っていました。
 ハラグロ伯爵の家族も複数捕縛され、残っているのは嫡男の嫁と幼い息子だけだそうです。
 ただ、攻撃対象が結果的に僕で王家を襲った訳ではないので降格でお家取り潰しにはならない可能性が高いそうです。
 これで、ハラグロ伯爵に関する話は終了です。

「王家主催の披露宴での事件なので、ナオには王家からも慰謝料を払う。それ以上に、ハラグロ伯爵家に慰謝料を請求するがな」

 うーん、慰謝料に関して言及があったけど、僕は既に多数のお金を持っているんだよね。
 でも、これから屋敷を持つのだからお金はあった方が良いと言われてしまいました。

「では、話はこれで終わりだ。ナオは、この後軍の施設で治療だな?」
「はい、復帰して初めてのお仕事です」
「無理して行わないように。エミリーがまた泣くぞ」

 陛下だけでなく、他の人たちもうんうんと頷いていました。
 当のエミリーさんは、もう泣かないと言っていましたけどね。
 ではでは、お仕事を頑張らないといけないね。