しかし、披露宴も終盤になって全ての貴族の挨拶が終わってみんな穏やかな空気になった際に大きな事件が起きてしまいました。

　ズサッ。

「わーん！」

　たまたま、僕の近くを歩いていた小さな子どもが派手に転んじゃいました。
　まだ一歳くらいの子どもですので、上手に歩けないんですね。
　僕だけでなく、みんなで転んじゃった子どもの所に向かいました。

　シュイン、ぴかー。

「これで、痛いのは大丈夫だよ」
「わあー！」

　小さな男の子は、転んだ際の痛みが良くなって満面の笑みを浮かべていました。
　僕も近くに来ていたちびっ子たちも、小さな男の子に釣られて笑みを浮かべた瞬間でした。

　ドン、ドスッ。

「うっ……」

　ドサッ。

「「「ナオにーに！？」」」

　誰かが僕にぶつかったかなと思ったら、僕の背中に鋭い痛みが起きたのです。
　しかも、痛みだけじゃなくて体が風邪を引いた様に震えて痺れが起きたのです。
　思わず倒れた僕は、ちびっ子たちのビックリする声が響く中で体が動けなくなってしまいました。
　体が痺れてしまって、回復魔法も状態異常解除魔法も使えません。
　これはマズいと思ったら、急に体を温かいものが包み始めました。

　シュイン、ぴかー。

「うぅ……」
「ナオ、しっかりして！」

　チラッと後ろを振り向くと、エミリーさんが真剣な表情をしながらシアちゃんと共に僕の治療をしてくれていました。
　エミリーさんは、豪華なドレスに血がつくのも構わずに治療してくれます。
　そのおかげで、かなり体は良くなりました。

　シュイン、シュイン、シュイン、ぴかー！

　エミリーさんとシアちゃんの治療で僕の体の痺れも少し良くなったので、僕は何とか魔力をふり絞って回復魔法と状態異常回復魔法を自分自身に放ちました。
　自分自身に鑑定魔法を使うと、ある表示がされていました。

「え、エミリーさん、まだ、毒が……」
「ナオ、喋らなくて良いわ。直ぐに状態異常回復魔法を放つわ」
「「ナオお兄ちゃん！」」

　シュイン、ぴかー。

　そして、エミリーさんとシアちゃんだけでなく、スラちゃん、カエラ、キースも倒れている僕の側に集まってきて状態異常回復魔法を放ってくれました。
　全員が一生懸命に魔法を放ってくれたお陰で、再び自分自身を鑑定すると毒の表示は綺麗に無くなっていました。

「エミリーさん、みんな、本当にありがとうございます。もう、大丈夫です」
「ナオ、無理に起き上がらないで。出血が酷いから、寝ていなさい」
「「無理は駄目！」」

　スラちゃんが生活魔法を使ってくれたお陰で、僕の体やエミリーさんの服などについた血は綺麗になっていました。
　でも、僕は上半身を起こそうとしたら出血が多いのでフラフラしてしまいました。
　エミリーさんだけでなく、カエラやキースも、涙目で僕の体を寝かせました。
　そういえば、僕を刺した人はどうなったのだろうかと思っていたら、ある声が聞こえてきました。

「貴様、息子に何をした！」

　ドスッ！

「ぐふぉ！」

　出入口付近で、お母さんが超激怒しながらかなり太っている貴族服を着た男性に渾身のボディーブローを突き刺していました。
　男性はお母さんのボディーブローを受けて、思いっきり吹っ飛んでいますね。
　ちびっ子たちがスライムたちに何か命令している姿もあったので、どうやら先に僕の側にいたちびっ子たちが何かをしたみたいです。
　でも、僕は出血多量の影響で段々と眠くなってきました。

「エミリーさん、眠くなっちゃいました……」
「あれだけの怪我を負ったのだから仕方ないわ。ゆっくり休みなさい」

　エミリーさんが僕の頭を撫でてくれているうちに、僕はいつの間にか眠ってしまいました。
　僕の周囲では喧騒が続いているけど、起きたら詳しく聞かないとね。