数日後、今度はお母さんとカエラとキースに代わってサマンサお姉ちゃんが王都にやってきました。
　しかし、今日は勇者パーティの活動はお休みです。
　王家の方々に加えてナンシーさんも、結婚式の準備で不在です。
　そして、ナンシーさんのお母さんのレガリアさんも結婚式の準備で王城に向かっていました。
　じゃあ何をするのかというと、今日はサマンサお姉ちゃんが結婚式で着る服を仕立てるためにオラクル公爵家に御用商人を呼ぶことになっていました。

「あの、私はお金を持っていますので……」
「あら、このくらいは気にしなくて良いわよ。娘のドレスの採寸もするし、それにサマンサさんにはナンシーも大変お世話になっているわ」

　実は、サマンサお姉ちゃんのドレスの作成費用をオラクル公爵家で持つことになりました。
　サマンサお姉ちゃんはかなり恐縮しているけど、イザベルさんの笑顔に押し切られました。
　この前お母さん達がオラクル公爵家に滞在した時にも、結婚式用の服の採寸をしています。
　お父さんとお母さんも大変恐縮していたけど、断るのも悪いので服の作成をお願いする事にしました。
　因みに、採寸の時にお母さんがお父さんのお腹がでてきたと溜息をついていました。
　僕は貴族服を着ることになっているので、特に新しい服を作る予定はありません。
　なので、今日はサマンサお姉ちゃんの服の採寸が終わるまで部屋で勉強をする事になりました。
　スラちゃん以外の友達は、サマンサお姉ちゃんの所にいるそうです。

　カキカキカキ。

「うーんと、これがこれで、こっちがこれで……」

　スラちゃんと一緒に勉強を進めるけど、ヘンリーさんからの本を終えたら陛下がたくさんの本を渡してきたんだよね。
　しかも、どの本もとても難しいしとても大変です。
　でも、ヘンリーさんはもっともっと勉強していたんだってね。
　ヘンリーさんは僕の目標だから、いっぱい勉強しないと。

　ドドドド、コンコン。
　ガチャ。

「ナオにーに、終わったよー！」
「よー！」
「キュー」

　こうして三時間ほど勉強していたら、部屋の中に元気な声が響いてきました。
　どうやら、サマンサお姉ちゃん、セードルフちゃん、ルルちゃんの体の採寸とドレスの色合わせが終わったみたいですね。
　ちょうど勉強もいいタイミングだったので、僕は迎えに来たセードルフちゃん達と共に応接室に移動しました。

「疲れた……」

　すると、そこにはいつもはビシッとしているはずのサマンサお姉ちゃんがソファーに寄りかかってぐったりしていました。
　どうやら、普段の冒険者活動とは全然違う緊張が続いていたので、気疲れしちゃったみたいですね。
　僕たちが応接室に入っても、ぐったりしていて暫く復活しませんでした。

「うん、やっぱり私は貴族の生活とか無理だわ。たまにこうしてナオの所に来て優雅な生活を体験するのもいいけど、ずっとってのはキツイなあ。ナオは頭がいいし環境の適応力があるもんね」

　暫くして復活したサマンサお姉ちゃんが紅茶を飲みながらしみじみと話していたけど、前に王城の夜会に参加した時もとても緊張していたもんね。
　そういう意味だと、やっぱり王家の方々やナンシーさんなんかは生まれながらの高貴な方だから華やかな所に慣れているんだね。
　午後はセードルフちゃんはお勉強の時間になったけど、サマンサお姉ちゃんはルルちゃんと遊んでリフレッシュしていました。
　僕はというと、セードルフちゃんの隣でまたまた勉強をしていました。
　今日は一日勉強してばっかりだね。