「前衛タイプが先陣を切って、後衛タイプが前衛タイプの補佐をする様に。ナオ君とスラちゃんは、広範囲探索魔法を使って常に周囲の状況を確認して報告してくれ」
「「「はい」」」

 ヘンリーさんは、直ぐに僕達に指示を出しました。
 前衛はナンシーさん、エミリーさん、お母さん、それに近衛騎士で、ヘンリーさん、シンシアさん、僕が後衛です。
 スラちゃん達も、基本は後衛です。

 シュイン、ズドドドドドーン。
 ヒューン、ドンドーン!

 すると、スラちゃんが空高く複数の魔力弾を打ち上げたのです。
 そして、魔力弾は廃村の各所に着弾しました。
 僕は慌てて広範囲探索魔法を使ったのだけど、どうやらスラちゃんは先制攻撃として広範囲探索魔法を使いながらピンポイントで長距離狙撃を行ったみたいです。
 ヘンリーさんも思わず苦笑したけど、気を引き締めて廃村に一気に向かいました。

「「せい、やあ!」」」

 シュッ、バキッ、ボカン!

「「「ぐはっ……」」」

 前衛を担当するナンシーさん、エミリーさん、お母さんが、スラちゃんの長距離狙撃を辛うじて防いだりした犯罪組織の構成員をぶっ飛ばしています。
 三人とも武器を使わずに、派手に殴り蹴り飛ばしていますね。

 シュイン、ズドドドドドーン。
 バリーン、ズドーン。

「「「ごはっ……」」」

 更に、シンシアさんとスラちゃんが高圧縮した魔力弾で長距離狙撃を行っていました。
 シンシアさんとスラちゃんの高圧縮した魔力弾は相手の魔法使いが展開している魔法障壁をいとも簡単に壊し、そのまま魔法使いをぶっ飛ばしていました。
 タイミングによっては、魔力弾で魔法使いの魔法障壁が壊れたタイミングで前衛の三人が間髪入れずにぶっ飛ばす事もありました。
 うーん、僕は広範囲探索魔法で誰がどこにいるかをヘンリーさんに伝える事しかしていないよ。
 というのも、スラちゃんもたまにヘンリーさんに広範囲探索魔法の結果を伝えているけど、基本的にずーっと高圧縮魔力弾で長距離狙撃をしているんだもんね。

「ナオ君が的確に的のいる位置を教えてくれるから、私も周りの人に指示を出せるんだよ」

 ヘンリーさんが僕の動きを労ってくれたけど、もう少し頑張りたいなと思っちゃうよね。
 すると、広範囲探索魔法にある変化が見られました。

「ヘンリーさん、三つの反応が廃村から出ていこうとしています」
「誰か分からないが、この廃村から逃げ出そうとしているのだろう。ナオ君、ドラちゃんに乗って先回りしてくれ」

 ヘンリーさんの指示を聞いて、僕は少し大きくなったドラちゃんの背中に乗り込みました。
 そして、一気に三つの反応があるところに向かいました。

「はあはあ。くそ、軍が奇襲攻撃を仕掛けるだなんて思ってもいなかったぞ」
「なんだよ、あの馬鹿みたいな魔法攻撃は。軍は大軍で仕掛けて来たのか?」
「どっちにしても、このままじゃ全滅だ。とにかく逃げるぞ」

 ちょうど三人に追いついたところで、三人の焦った言葉が聞こえてきました。
 身なりも少しいいので、どうやらこの三人がこの犯罪組織のトップみたいですね。
 僕を乗せたドラちゃんは、三人の進む方向の少し前に着陸しました。

 ドサッ。

「グルル……」
「「「り、竜! もしかして、『白銀の竜使い』!?」」」

 ドラちゃんが唸り声を上げると、犯罪組織のトップは尻もちをつくほどビックリしちゃいました。
 僕の二つ名も知っているし、ある程度物知りみたいですね。

「えっと、抵抗しないなら酷い事はしません。大人しく投降する事をす……」
「「「うるさい!」」」

 僕はいつものヘンリーさんが言っているセリフを言おうとしたけど、三人は即座に拒否しました。
 こうなったら、無理矢理でも捕まえないといけませんね。
 でも、怪我をさせるような事は嫌なんだよなあ。
 なので、僕はある魔法を使いました。

 シュイン、もわーん。

「「「な、な……ぐう」」」

 ドサッ。

 僕がいつも使う催眠魔法で、三人を直ぐに眠らせました。
 更に、拘束魔法で三人を拘束すれば完了です。
 こうすれば、相手を傷つけることなく対処できます。
 念の為に広範囲探索魔法で周囲を確認したけど、問題のありそうな反応はありません。

「よっと」

 シュイン、ふわー。

 僕は、眠らせた三人をふわっと念動で浮かべました。
 流石に僕の力じゃ大男三人を運ぶことは出来ないし、ドラちゃんに運んでもらうのも一苦労です。
 このまま廃村に戻って、みんなと合流しないと。

「ドラちゃん、みんなのところに戻ろうね」
「キュー」

 ドラちゃんも小さい姿に戻り、僕の側でふわふわと飛んでいます。
 こうして、廃村を占拠していた犯罪組織を壊滅させる事ができました。
 あとは、お母さん達がやりすぎていないかちょっと心配です。