翌日は、大教会で奉仕活動を行うことになりました。
 捕まえた貴族や関係者への聴取があるので、ヘンリーさんとスラちゃんは軍の施設に向かいました。
 ナンシーさんも、結婚式の準備があるので打ち合わせの為に王城に向かいました。
 ですので、今日は最初から実家から助っ人を呼ぶことにしました。

「「おはようございます」」
「「「おはよー」」」

 朝早く、ドラちゃん便に乗って実家からやってきたのはカエラとキースでした。
 もうすっかり顔馴染みになった、アーサーちゃん、エドガーちゃん、セードルフちゃん、ルルちゃんと元気よく挨拶をしていました。
 ちびっ子達はカエラとキースと一緒に治療をしたこともあるし、ルルちゃんは既にドラちゃんを抱いてスタンバイしていました。

「いつも、ナオがお世話になっております。本当にありがとうございます。それに結婚式の招待状まで追加で頂き、ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそナオ君にはとてもお世話になっておりますわ。それに、結婚式の招待状は最初もナオ君の家族全員に出した方がいいのではという意見もありましたのよ。招待が遅くなり、こちらこそ申し訳ないですわ」

 今日カエラとキースと一緒についてきたのはお母さんで、初回ってこともあるのでお父さんも馬車に乗って王都に来るそうです。
 最初お父さんもドラちゃんに乗って来るようにとお母さんに言われたみたいだけど、お父さんは土下座するほどの勢いで拒否したそうです。
 流石に行かないわけには行かないので、渋々馬車で王都へ行くことで合意したそうです。
 そして、お母さんとマリアさんもすっかり顔見知りになったので、仲良くお話をしていますね。

 トントントン、トントントン。

「ナオ、隣にある野菜を取ってくれる?」
「えーっと、この人参でいいですか?」
「そうそう、三本こっちに渡して」

 僕はというと、最近の奉仕活動で恒例となったエミリーさんと並んでの炊き出しの準備をしています。
 僕とエミリーさんは普通に野菜を切っているだけなんだけど、何故かお母さんとマリアさんがニヤニヤしながら僕とエミリーさんの事を見ていました。
 ちびっ子達は、いつもの事だと完全にスルーですね。
 スープの準備が出来たので、早速炊き出しのスープを配り始めました。

 シュイン、ぴかー。

「前にも治療してもらったが、ナオの妹と弟も中々の治療の腕だな」
「「えへへ!」」

 カエラとキースは何回も大教会で無料治療をしているので、治療に訪れた冒険者も僕の双子の妹と弟だと知っていました。
 カエラとキースも、治療の腕を褒められてとっても喜んでいますね。

「アンアン!」
「キキッ!」
「うお、何だなんだ!?」

 ギンちゃんとキキちゃんが、軍の兵と協力して炊き出しなどに並んでいる犯罪者を見つけていました。
 クロちゃんはアーサーちゃん達の護衛をしているけど、二匹だけでも物凄い成果をあげていました。
 こうして何事もなく炊き出しが進んだのだけど、ある冒険者がお母さんの事を見て思わず固まっちゃいました。

「あ、貴方はかの有名な『剛腕の魔女』ではありませんか?」
「あら、私の二つ名を知っているのね。でも、今はもう四人のお母さんよ」
「「「ええー!?」」」

 集まっていた冒険者が思わずざわめいているけど、実はお母さんにはある二つ名がありました。
 お母さんは身体能力強化を全開にして、拳を土魔法で作ったガンドレッドで固めて敵を思いっきりぶん殴ります。
 更に、大量の魔力弾を敵にぶつけながら大魔法で殲滅することもします。
 物理攻撃と魔法攻撃の両方で暴れまくるその戦闘スタイルからついた二つ名が、「剛腕の魔女」です。
 サマンサお姉ちゃんも、お母さんと似たような戦闘スタイルです。

「ナオが化け物みたいに強い訳が分かったぞ」
「あの『剛腕の魔女』の子どもなら、色々な魔法が使えても何もおかしくないな」
「ナオの姉も双子の妹と弟もすげーしな」

 冒険者がもの凄く騒めいているけど、お母さんはとんでもなく強いんだよね。
 僕が全力を出しても、絶対に敵わないです。

「ナオのお母さんと一回手合わせしたけど、全然敵わなかったわ。私が完全に子ども扱いされちゃったわ」

 冒険者の発言を僕の横で聞いていたエミリーさんだったけど、前に僕のお母さんと手合わせしたことがありました。
 結果はエミリーさんがお母さんに瞬殺されました。
 多分、近衛騎士でも敵わないくらい強いんじゃないかって言っていました。
 ヘンリーさんやシンシアさんなら、お母さんといい勝負ができるかもしれませんね。
 こうして、夕方に無事に奉仕活動を終えることができました。
 すると、大教会前に姿を現した人が」

「いやあ、ようやく着いた。馬車にずっと乗っていると、腰が疲れるわ」
「「おとーさんだ!」」

 お父さんが、実家から馬車に乗ってようやく王都に到着したみたいです。
 僕の実家から王都まで馬車で一日で着くとはいえ、やはりずっと馬車に乗っているのは疲れるみたいですね。
 カエラとキースは、早速お父さんのところに走って行きました。

「では、馬車に乗って屋敷に帰りましょうね」
「「「はーい」」」

 マリア様がちびっ子達に声をかけると、元気よく返事をしてそれぞれの馬車に乗って行きました。
 僕たちも、オラクル公爵家の馬車に乗らないとね。

「はあ、また馬車に乗らないといけないのか……」
「ほら、愚痴を言っていないでさっさと馬車に乗りなさい。直ぐにお屋敷に着くんだから、少しの我慢よ」
「へーい」

 お父さんとお母さんが夫婦漫才をしているけど、なんだかんだ言ってとっても仲良いよね。
 エミリーさんも、思わずニコリとしながら僕のお父さんとお母さんの事を見ていました。