新年から続いたゴタゴタもようやく落ち着き、後は関係者の裁判を待つばかりになりました。
 オオボス侯爵とラスボス司教は魔獣化した状態から戻って本当に辛うじて生きているレベルなんだけど、しっかり罪は償わせると陛下は厳しい口調で言っていました。
 邪神教を使って王国の権力を握ろうとした張本人だし、ボス伯爵と併せて厳しい処分が待っているでしょう。
 そして、今日は処分通達を貴族に伝える謁見の日になりました。
 僕は、朝早くからキチンとした服に着替えて、ランディさんとナンシーさんと共に王城に向かいました。
 スラちゃんは僕と一緒についてきたけど、ドラちゃん達は屋敷でお留守番です。
 特に久々に屋敷に大好きなドラちゃんがいるので、ルルちゃんは朝からニコニコしていました。

「今回は、勇者パーティメンバー全員に勲章が授与される事になった。ナオ君の爵位を伯爵にしてはという話もあったけど、この前子爵になったばかりだから予定通り来年の新年の謁見で伯爵になる事になった。しかし、このままドンドンと功績を積み上げて行くと、今度は侯爵も見えてくるな」

 馬車の中でランディさんがこんな事を言ってきたけど、貴族になってもその後の対応がとても大変なのは特に今回の邪神教関連の事件で改めて思いました。
 貴族を支える多くの人たちによって貴族家が成り立っていて、皆が協力しないといけません。
 僕だけ頑張っても駄目なんだよね。

「ナオ君は、この邪神教関連の事件の対応を進める内に、とても大きく成長した。体だけでなく、思考も精神力もだ。成人するまで、この調子でドンドンと身体共に成長して欲しいものだ」
「ナオ君は特別頭が良かったけど、経験がプラスされて本当に成長したよね。私も側にいて、ナオ君の成長を肌で実感したわ」

 ランディさんだけでなくナンシーさんも僕が成長したと言ってくれたけど、僕は常に必死で頑張ってきただけであんまり実感はないんだよね。
 知識面もまだまだ足りないので、知識面も増やさないといけないんだよなあ。
 そんな事を思っていたら、僕たちを乗せた馬車はあっという間に王城に到着しました。
 僕達は、いつもの謁見をする前に集まる控室に向かいました。

「確かに、初めて会った時よりもナオ君はとても成長しているよ。ナオ君の事をまだまだだと思う人もいるけど、それは要求レベルが高いだけで年齢を考えると神童だと言われてもおかしくないよ」
「ナオ君の周りにいる人のレベルが高いから、ナオ君のレベルが相対的に低いって思われているだけなのよ。冒険者としても、とてもレベルが高いと思うわ」

 控室でヘンリーさんとシンシアさんが僕の事を褒めてくれたけど、僕はどう頑張ってもヘンリーさんみたいにはなれないもんね。
 ヘンリーさんは王族として生まれた時からキチンとした教育を受けているし、育ってきた環境が僕とは全く違います。
 でも、僕は僕なりに頑張れば良いんだって思うようになったので、無理をしないようにしています。
 そう考えると、僕に対する要求が一番高いのは、ずーっと僕と一緒にいるスラちゃんな気がします。
 スラちゃんは、僕なら高いレベルでもできるって思っているみたいです。

「ナオ君は、偉くなっても人の心の悪い所を見ても優しいままだったわ。何よりも、それが凄いのよ。人は、権力や大金を手にすると変わってしまう事が多いのよ。嫌な事を思い出すかもしれないけど、ナオ君を無理矢理冒険者にした三人がまさにそうだったわ」

 シャーロットさんは僕の事を別の意味で褒めてくれたけど、僕の場合はあの三人みたいにはなりたくないって思いがあったからなんだよね。
 それに、特にお母さんがお金の使い方について厳しく教えてくれたし、その事が生きているのかもしれません。

「今後の功績にもよるが、来年の新年の謁見でナオを伯爵にし、エミリーとの婚約を発表し、成人になったら屋敷を下賜する事を発表する。これは、余程のことがない限り既定路線だ。まあ、ナオなら問題ないと思うがな」

 そして、陛下が僕の事について言ってきたけど、もう何だか功績ばかりでお腹がいっぱいです。
 そろそろ謁見が始まるので皆が控室からそれぞれ移動し始めたけど、今日は廊下を歩いても嫌な視線は感じられませんでした。
 やっぱり、多くの邪神教関係者が捕まったことが要因だろうね。