大教会の中に戻ると、応接室に行くようにシスターさんが案内をしてくれました。
 すると、またもや神妙な表情をした教皇猊下が僕たちを待っていました。

「二人とも、座ってくれ。いやはや、まさか暗黒杯が見つかるとは思わなかったぞ」

 聖職者の控室で埃を被った暗黒杯が見つかったことは、教会的にはかなり大きな事みたいです。
 埃を被った状態だと、暗黒杯はただの器に見えるもんね。

「いずれにせよ、エミリー王女殿下とナオ君が色々と確認してくれて本当に良かった。国王陛下には、儂から改めて謝罪しよう」
「僕たちも、お友達の力がなければ暗黒杯を見つける事はできませんでした。いずれにしても、これからいい方向に向かってくれればいいですね」
「まさにそうじゃのう。ブレア王子殿下とナンシー嬢の結婚式が行われるし、無事平穏に進むことを祈るばかりじゃ」

 教皇猊下もだいぶお疲れみたいだけど、元を正せばオオボス侯爵とラスボス司教が邪神教に手を出さなければ済んだ話しだもんね。
 そう考えると、教会も僕たちも邪神教のごたごたに巻き込まれた形です。
 これで大教会での活動を終えたので、僕たちは身支度をして馬車に乗って王城に戻ることにしました。
 王城に戻った僕たちは、直ぐに大会議室に呼ばれて大教会の捜査状況を報告しました。

「そうか、見つかってはいけないものが見つかってしまったか。教皇猊下も、さぞかし悩んでいる事だろう」

 報告を受けた陛下は、腕を組みながら難しい表情をしていました。
 邪神教関連は王国の貴族が引き起こした事件なのは間違いないので、陛下も立場的に難しいはずです。
 何れにせよ、連日続いた邪神教関連の捜索も一段落ついたことになります。

「ヘンリー達も、昼食前にオオボス侯爵領から王都に戻ることになった。ナオもエミリーも、少し休むといい」
「「ご配慮頂きありがとうございます」

 そして、僕とエミリーさんは休養を指示した陛下に臣下の礼をしました。
 とはいえ、僕たちが休みになるのを心待ちにしていた人達がいました。

「「「わーい」」」
「アンアン!」

 王城の中庭で、アーサーちゃん、エドガーちゃん、そしてたまたま王城に遊びに来ていたセードルフちゃんとルルちゃんが、クロちゃんと元気よく追いかけっこをしていました。
 ちびっ子たちはここのところずーっと僕たちと遊べなかったので、待ちに待ったって感じですね。
 ちなみに、中庭に置いてある椅子の上にみんなのスライム達が集まっていて、何やらお話をしていました。
 スライム同士も久々に会うから、お互いに報告する事があるみたいです。
 すると、アーサーちゃんが王都の空に向かってくるあるものに気が付きました。

「あっ、ドラちゃんだ!」
「「「ドラちゃん!」」」

 いいタイミングでオオボス侯爵領からドラちゃん達が帰ってきたみたいで、ちびっ子たちは更にウキウキし始めました。
 ドラちゃん達は王城の隣にある軍の施設に着陸して、報告をする為に王城に向かったみたいです。

「ようやく、ナオ君のお友達全員と遊べるわ。みんな、本当に楽しみにしていたからね」
「本当ね。ちびっ子たちが、ブスッとした顔じゃなくて久々に良い笑顔になっているわ」

 マリアさんとイザベルさんがはしゃいでいる子どもたちを微笑ましく見ていたけど、国家の大事だったとは言えちびっ子たちは寂しい思いをしていたもんね。

「「「おかえりー!」」」
「キュー!」
「アンアン!」
「キキッ!」

 程なくして、ドラちゃん達も中庭に姿を現しました。
 ちびっ子たちは、更にニコニコ顔になってドラちゃん達を出迎えていました。
 そして、そのまま追いかけっこを再開しました。

「ヘンリーさん、お疲れ様です」
「ナオ君の方こそ、大教会では大変だったみたいだね。こちらは殆どやる事はなかったし、楽なものだったよ」

 ヘンリーさん達も中庭に姿を現したので、僕も色々とヘンリーさんに話しました。
 すると、ヘンリーさんがある事を言ってきました。

「例の伯爵への聴取だが、私達も同行する事にした。邪神教とは関係ないが、きっと人生に役立つ事を聞くことが出来るだろう」

 伯爵の調子が良くなることが前提なんだけど、ヘンリーさん達も伯爵への聴取に参加する事になりました。
 僕も、あの伯爵から色々な話を聞けるのではと楽しみにしているんだよね。

「「「キャー!」」」

 でも、その前に寂しい思いをさせていたちびっ子たちと遊んであげることが優先ですね。
 僕たちも混じって、みんなでちびっ子たちと遊んであげました。
 昼食を食べた後も中庭で遊んでいて、結局お昼寝の時間までみんな元気よく動いていました。