翌日も、僕とエミリーさんは王都に残ってヘンリーさん達と別行動を取ることになりました。
 でも、ヘンリーさん達の対応も順調に進んでいるみたいで、もしかしたら明日には僕とエミリーさんと一緒に王都で活動するかもしれないと言っていました。
 オオボス侯爵家に正式に処分が下るときは末息子が王都に来ないといけないけど、その時はドラちゃんに乗って一瞬で移動できるもんね。
 ちなみに、お腹を刺されて治療した伯爵はまだ調子が良くないそうなので、聴取は明日以降にする事になりました。

「今日の午前中は、大教会での捜索を手伝うように。現職の司教が邪神教に手を出したのもあって、未だに教会の中は混乱しているという」
「「畏まりました」」

 王城に行ってエミリーさんを迎えに行くとちょうど陛下と会い、今日の捜査方針を伝えられました。
 そういえば、ラスボス司教は仕事を殆どしていなかったとはいえ、現職の聖職者だったんだよね。
 ラスボス司教と繋がっていた王都大教会所属の聖職者は既に捕まっているけど、証拠品とかはまだ大教会にあるかもしれません。
 特にクロちゃんとシアちゃんがやる気満々なので、隠されている物も直ぐに見つけちゃうかもしれませんね。
 ということで、僕たちは近衛騎士と共に馬車に乗って大教会に向かいました。

「エミリー王女殿下、ナオ君、わざわざ来てもらい申し訳ない。この度は、教会のものがとんでもない迷惑をかけてしまった」

 大教会に着くと、何と教皇猊下が僕たちのところにやってきて頭を下げてきたのです。
 これには僕もエミリーさんもビックリしちゃったので、思わずワタワタしちゃいました。

「教皇猊下、頭を上げてくださいませ。邪神教対応は私達の仕事ですから、何も問題ありませんわ」
「そうです。僕たちは、出来ることを頑張っているだけですので」
「そう言ってもらい、本当にありがとう。教会のシスターを案内役につけるので、宜しく頼む」

 エミリーさんと僕がわちゃわちゃしながら声を掛けると、教皇猊下もようやくホッとした表情を見せました。
 そして、シスターさんと共に大教会内を移動し始めました。

「アンアン!」

 すると、程なくしてクロちゃんが何かあると吠えだしました。
 ドアの先にある部屋の中に、何かあると教えてくれています。
 これって、もしかして……

「あの、シスターさん。この部屋はもしかして捕まった聖職者の控室ですか?」
「その通りになります。他の者も使用しておりましたが……」

 シスターさんも少し困惑していたけど、この部屋に何かあるのは間違いなさそうですね。
 ということで、僕たちは早速部屋の中に入ってごそごそと捜索を始めました。
 すると、とんでもないものがでてきたのです。
 それは、本棚の上に無造作にちょこんと置かれていた物でした。

「あっ、こんなところに暗黒杯が! 物陰に隠れていて見つからなかったのかな?」
「な、何と邪神教の聖杯がこんなところに……」

 もの凄く見つけにくい場所からまさかの物が見つかって、シスターさんもかなりビックリしていました。
 シアちゃんがスライムの特性を活かして部屋の隅々まで移動して捜索をしていて、クロちゃんも自慢の鼻を使って探し物をしていました。
 エミリーさんが二匹の側にいてくれるので、その間に僕が暗黒杯から魔石を取り出して使用不可能にします。

「本棚の後ろとかから、少しだけ書類が出てきたわね。どれも確認済みの物だけど、出てきてはいけないものだわ」

 書類についたホコリを払いながらエミリーさんは思わず溜息をついていたけど、少し手抜き捜査と言われても仕方ないですね。
 この部屋にあったのはこれだけみたいなので、僕たちは次の部屋に向かいました。

「アンアン!」
「うーん、ちょっとよどみがあるね。浄化してから作業を行おう」
「アン!」

 次の部屋も捕まった聖職者が使っていた部屋なんだけど、何故か部屋の中がどよーんとよどんでいました。
 もしかしたら、捕まった聖職者は穢れた血が入ったポーション瓶を携帯していたのかもしれないね。

 シュイン、ぴかー。

 うん、空気のよどみも綺麗さっぱりなくなったので、これで作業しやすくなりました。
 さっそく捜索を開始するけど、ここでは重要な物は見つかりませんでした。

「うーん、普通の落とし物ばっかり見つかりましたね」
「申し訳ございません、担当に渡すように手続きいたします」

 シスターさんが思わず僕に謝罪してきたけど、誰だって落とし物はするもんね。
 その後は教会の敷地の中をみんなで歩いて色々と確認したけど、特に不審な物は見つかりませんでした。
 というか、いきなり最初に暗黒杯が見つかったインパクトが大きかったのかもしれません。
 全ての場所を確認し終えたので、僕たちは大教会の中に戻りました。