その豪華な装飾品は、居住区域の各部屋から大量に出てきました。
 キンキラキンに光る派手な宝石が付いた指輪やネックレスに、ド派手なデザインの衣装がわんさか出てくるのです。
 更には、豪華な装飾がされた鏡や天蓋付きのベッドに物凄く豪華な剣や杖も出てきました。

「うーん、アンティークっぽい質の良い内装もあるのに、全然使っていないですね」
「質の良いアンティーク品は、元々のオオボス侯爵家の屋敷にある装飾品ね。装飾品も一旦回収して、ナオ君の魔力が回復したら鑑定して仕分けましょう」

 シンシアさんも思わず呆れる状態だけど、僕的には元々屋敷にある物は少ない気がしました。
 まとめて僕のアイテムボックスに収納して、後で大きな部屋で鑑定しましょう。
 こうして各部屋にあった豪華な金品を回収すると、使用人が僕たちに声をかけてきました。

「皆様、ご子息様が目を覚まされました」
「ありがとう、直ぐに向かいます」

 シンシアさんが使用人ににこやかに返事をしたけど、あの病気だった末息子の体調が良くなったんですね。
 ちょうど居住区域の捜索も終わったので、僕たちは使用人の後をついて末息子がいる客室に向かいました。

 コンコン。

「失礼します」

 客室に入ると、先程まで顔色悪く寝込んでいた男性がベッドから上半身を起こしていました。
 僕たちも、直ぐに男性の寝ているベッドの側に移動しました。

「皆様、父と叔父がとんでもない事をし本当に申し訳ありません。オオボス侯爵家の者として、深く謝罪いたします」

 末息子は、僕たちに頭を下げるとともに深く謝罪しました。
 親の犯した罪を全く無関係の自分が謝罪するなんて、この人は良い人ですね。
 クロちゃんとギンちゃんも、問題ないと尻尾をフリフリしていました。

「謝罪を受けましょう。貴方がオオボス侯爵家の中で難しい立場にあったのは理解しておりますが、先ずは自身の体調を回復させる事が重要です。我々がオオボス侯爵領にいる間は、毎日治療を行いますので」
「何から何まで本当に申し訳ないです。病床におりましたが、何となく家の事は理解しておりました。各地で勇者様一行が活躍していたのに、本当に馬鹿な事をしました」

 末の息子は、親の犯した罪を正確に把握していました。
 そして、本人にはどうする事も出来ない歯がゆさを感じていたのです。
 何にせよ、ゆっくり休んで徐々に体力をつけないと駄目ですね。
 そして、末息子はある事を僕たちに伝えてきました。

「その、私は両親の遺品はいりません。それこそ、家族には良い思い出がありませんので、遺品があると辛いことを思い出してしまいます」
「分かった、貴方の意思を尊重するわ。恐らくオオボス侯爵とラスボス司教の個人資産は全て没収となるし、オオボス侯爵家に伝わる物を残すようにするわ」
「ご配慮頂き、本当にありがとうございます」

 末息子は、再びシンシアさんに深くお礼を言いました。
 そして僕たちは客室から出て話をしたけど、シンシアさん曰くこれから確認して没収する金品で相当額の罰金を賄えるはずだそうです。

「シンシアさん、後は何をすれば良いですか?」
「そうね、屋敷内の捜索はだいたい終えたし、今度は敷地内の捜索を行うわ。後はヘンリーとスラちゃんとドラちゃんがいつ帰ってくるかによるけど、領都内の探索も行わないとならないわ。住民への奉仕活動は、大体のことが落ち着いてからになりそうね」

 今回は事件の規模が大きいから、捜索とかの後処理が大変になりそうです。
 早速屋敷の外に出て捜索を始めると、直ぐにクロちゃんとギンちゃんが離れの倉庫に何かあると僕たちに伝えてきました。
 そして、倉庫を開けると僕たちみんなびっくりしちゃいました。

 ガラガラガラ。

「うわあ、凄い数の暗黒杯があります!」
「これは凄いわね。手分けして、暗黒杯から魔石を取り外して無効化しましょう」

 倉庫の中から、三十個を超える暗黒杯が見つかりました。
 シンシアさんの指示でみんなで暗黒杯から魔石を外していくけど、ここで力を発揮したのがシアちゃんとキキちゃんでした。
 二匹とも、器用に暗黒杯から魔石を外していきます。
 流石にクロちゃんとギンちゃんは暗黒杯から魔石を外せないので、作業をしている僕たちの警備をしていました。
 その他にも封印のお札とか色々な物が見つかったので、まとめて僕のアイテムボックスにしまいます。
 シンシアさんも、逐一通信用魔導具で王城に連絡をしていました。
 その他には特になかったんだけど、念入りに調査をしたので全部終わったのが昼食前になっちゃいました。