屋敷の使用人を含めて全員屋敷の外に出てきたのだけど、よく見るとオオボス侯爵家の人がいないんだよね。
 使用人ばかりの中で、一人の若者が兵の担架に乗せられて僕たちのところに運ばれてきました。
 痩せ細っていて顔色も悪く、かなり重病だということが一目見て分かりました。
 でも、僕はもう殆ど魔力が残っていないし、どうしようかなと思っていました。

「ナオ、ここは手分けしましょう。私とシアちゃんが、この男性を治療するわ」

 シュイン、ぴかー。

 直ぐに、病気の男性の事をエミリーさんとシアちゃんが治療しました。
 かなりの魔力を使っちゃったみたいだけど、何とか病気の男性を治療できたみたいです。
 すると、若い執事がとてもびっくりすることを教えてくれました。

「その、この方はオオボス侯爵家の末息子になります。病弱ということで、離れにある使用人の家に入れられていました。その他のオオボス侯爵家の者は、その、親類含めて全員力を得ようとして亡くなりました……」
「もしかして、穢れた血を飲んだのかしら?」
「その通りでございます。しかし、元来の不摂生もあり、体が耐えられなかった模様です。私の父である先代の執事も、力を欲して先日亡くなりました。私は、近い内にオオボス侯爵家は崩壊すると思っておりました」

 若い執事とシンシアさんがやり取りをしていたけど、まさかオオボス侯爵家がほぼ全滅状態にあったとは。
 しかし、肝心のオオボス侯爵とラスボス司教が生きていたので、本人達はどうにかなるだろうと楽観視していたそうです。
 結果として、僕達がオオボス侯爵領にやってきて一気に制圧しちゃったのだけど。

「何にせよ、オオボス侯爵家の者が生きていて良かったわ。病気で隔離されていた者に全責任を負わせる気はないけど、それでもオオボス侯爵家の者としての責任はあるのよ」
「中々難しいですね。本人は病気で隔離状態だったのに、実家の不祥事のツケを払わないとならないといけないとは」
「その辺は、王城もある程度配慮するはずよ。私も王城に連絡したし、とにかく問題を引き起こしたのはオオボス侯爵とラスボス司教なのだからね」

 シンシアさんは通信用魔導具を操作しながら僕の質問に答えてくれたけど、とにかくオオボス侯爵領の安定的な統治が必要です。
 幸いにしてオオボス侯爵領兵と駐留している国軍の関係は良好で、治安維持は問題ありません。
 まだ若いとはいえ執事も問題ないと判断されたので、後は末息子が治療で良くなる事を祈るだけですね。
 ということで、問題ないと判断された使用人は仕事に戻り、隔離されていた末息子は一旦客室に運ばれました。
 そして、その間にクロちゃんとギンちゃんとキキちゃんと共に、ナンシーさんが執務室の捜索を行っていました。
 僕たちも、執務室に合流して捜索の続きを行います。

 ゴソゴソ、ゴソゴソ。

「うわあ、たくさんの証拠品が見つかっていますね」
「そうなのよ。もう、嫌になるってくらい出てきたわ」

 執務室のテーブルの上にはこれでもかってくらい書類が積み上がっていて、オオボス侯爵とラスボス司教の罪の重さがうかがいしれます。
 とはいえ、どうやらこの書類を見る限り事件に関わっていた人は殆ど亡くなっていて、残るはオオボス侯爵、ラスボス司教、それに捕まった使用人と教会関係者だけみたいです。
 教会にも軍の兵が向かっていて、絶賛捜索中らしいです。

「王都にいる貴族の名前も多数出てきているわね。連絡したから、後は王都の軍に任せましょう」

 ナンシーさんも通信用魔導具を使って各所に連絡していたけど、既にブレアさんを中心にして軍が動いているそうです。
 そして、逆に王都からシンシアさんの通信用魔導具に連絡が入りました。

「オオボス侯爵とラスボス司教は重犯罪者用の牢屋に入れられて、早速スラちゃんの催眠術聴取を受けたみたいね。ただ、本人の命が風前の灯火だから、裁判まで持つか分からないわね。まあ自業自得だから、お義父様もその点は気にしていないみたいよ」

 シンシアさんが思わず溜息をつきながら話してくれたけど、オオボス侯爵とラスボス司教は浄化の反動でガリガリな上に髪の毛も全部抜け落ちちゃったもんね。
 それに、今回の邪神教事件の元締めだから、最初から厳しい判決が待っています。
 そういうのを考えると、どっちが良いのか中々難しいところですね。
 証拠品は、全てシンシアさんのマジックバッグに入れて盗まれないようにします。
 スラちゃんがいたらスラちゃんのアイテムボックスに証拠品を入れて王都に運ぶんだけど、そのスラちゃんが一足先に王都に行っているから証拠品を王都に持っていくのは明日になりそうですね。

「じゃあ、今度は居住区域の捜索を始めましょう」
「「アンアン!」」
「キキッ!」

 探し物ならお任せなクロちゃん、ギンちゃん、キキちゃんが、シンシアさんに頑張るぞと気合を見せていました。
 そういえば、豪華な装飾品とかはまだ出てきていないですね。