そして、ヘンリーさんがオオボス侯爵とラスボス司教にある事を指摘しました。

「二人とも、普段から少しずつ穢れた血を飲んでいたな。一気に多量の穢れた血を飲むと反作用が発生するが、少しずつならその影響も少ない」
「ほう、その事を見破っているとは。流石はヘンリー殿下といったところだな」
「学のない連中は、ただ単に力だけを欲する。そういう事にも気が付かないレベルだな」

 ヘンリーさんの指摘を受けたオオボス侯爵とラスボス司教は、まるでヘンリーさんを見下すようなニヤリとする表情をしていました。
 暗黒杯の事を知らなければ、穢れた血の使い方なんて分からないもんね。
 そして、何故かオオボス侯爵とラスボス司教はペラペラと色々な事を話し始めました。

「我が家は地方をまとめる立場にあるが、所詮は地方の一貴族にしか過ぎん。過去に王家から嫁が来ているが、それもだいぶ昔の話だ。そうなると、つい思ってしまう。このまま永遠に一地方の貴族で終わってしまうのではないか、とな」
「男子たるもの、一度は夢を追いかけてみたくなるものだ。それが、実現可能な夢ならばな。我々兄弟は、その全てを手に入れるだけの力を手に入れたのだよ」

 つまり、オオボス侯爵もラスボス司教も、より権力を欲して邪神教に手を出したんだ。
 でも、ちゃんとしたやり方ではなく手を出しちゃいけないものに手を出した時点でオオボス侯爵とラスボス司教の負けな気がします。
 すると、突然オオボス侯爵とラスボス司教が不敵に笑い始めたのです。

「ははは。飛んで火に入る夏の虫とは、まさにお前らの事だな!」
「ふふふ。この場で、お前らを殺してやる。オオボス帝国の礎になるのだ、深く感謝しろ!」
「「はあああ……」」

 ズゴゴゴ……

 突然オオボス侯爵とラスボス司教が気合を入れ始めると、二人から真っ黒の魔力の渦が放出されたのです。
 それに伴い、ドンドンとダークシャドウの気配も濃くなってきました。

「いかん、ナオ君浄化を」
「はい!」

 先ず、僕とドラちゃんが一気に溜めた魔力を解放します。
 更に、シンシアさんも水魔法の攻撃を行います。

 シュイン、ズゴゴゴゴーン!
 バシッ、バシッ!

「「はははー! 無駄無駄無駄!」」
「ヘンリーさん、強力な魔法障壁で浄化魔法障壁が跳ね返されています!」
「普通の魔法も駄目だわ。何という魔力なの!?」

 僕たちの魔法攻撃が苦戦する中、オオボス侯爵とラスボス司教の高笑いが屋敷中に響き渡りました。
 その間にも、オオボス侯爵とラスボス司教の体が歪に盛り上がっていきます。
 筋肉が肥大化し、寝間着をビリビリと破いていきました。
 ダークシャドウの勢いはまずまず強くなっていき、万事休すかと思われたその時でした。

 ガラガラ、ドサッ。

「「ぐふっ……」」
「「「あっ……」」」

 僕たちの放った魔法の一部が天上に当たり、備品がちょうどオオボス侯爵とラスボス司教のところに落下したのです。
 すると、天上から落ちた備品がそのままオオボス侯爵とラスボス司教に直撃しました。
 オオボス侯爵とラスボス司教が放っている魔法障壁って、魔法には物凄い耐性があるけど物理攻撃には滅茶苦茶弱いのでは。
 僕たち全員が、同じ事を考えました。

「ふっ」

 シュシュッ、ザシュ!

「「グアアア!」」

 そして、ヘンリーさんがオオボス侯爵とラスボス司教に向けて投げると、魔法障壁を貫通してそのまま二人の腹部に突き刺さりました。
 もう、これで確定ですね。

「物理攻撃を仕掛ける。途中で魔法も放って、どうなるか確認しつつだ」
「「「はい!」」」

 ヘンリーさんの指示で、僕たちは一斉に剣を抜きました。

 ヒュンヒュン、じゅー。

「「ガアアアア!」」

 更に、スラちゃんとシアちゃんが酸弾をオオボス侯爵とラスボス司教の顔を目掛けて乱射しました。
 酸弾はうまい具合にオオボス侯爵とラスボス司教の顔面に当たり、二人は獣みたいなうめき声をあげながら両手で顔を押さえていました。

「はあっ!」
「せい!」

 ザシュ、ザシュ!

「「ガアアアアー!」」

 ナンシーさんとエミリーさんが、気合い一閃の一撃をオオボス侯爵とラスボス司教に放ちました。
 まだ顔を押さえているオオボス侯爵とラスボス司教は、腹部と背中を思いっきり切られてうめき声を上げています。
 しかし、二人の傷口は物凄い早さで再生していき、紫色の煙と黒い血を流していました。
 もう、オオボス侯爵とラスボス司教は人間じゃなくなっているのかな。
 念の為に、オオボス侯爵とラスボス司教に鑑定魔法を放ちました。

 シュイン、もわーん。

「ヘンリさん、オオボス侯爵とラスボス司教のステータスが『魔獣』になっています!」
「穢れた血を飲んでいた時点で、こうなることは予想できた。もはや、オオボス侯爵とラスボス司教の生死を問わず捕らえることにする」

 ヘンリーさんも、気持ちを切り替えて僕たちに指示を出しました。
 そして、ここからが本当の戦いになりました。