ゴーマン伯爵家の脅威も去り、僕たちも普通に活動を再開しています。
 殆どが事前に予定された所を浄化して行くんだけど、今日はなんととある屋敷の浄化依頼です。
 しかも、びっくりするところでした。

 どよーん。

「あの、僕少し前にこの屋敷に来たばっかりです……」
「奇遇ね、私も同じことを考えていたわ……」

 僕とエミリーさんも驚いたのだけど、なんと今日の浄化する屋敷はこの前捜索したばっかりの元ゴーマン伯爵の屋敷でした。
 捜索した時は全然平気だったのに、今は屋敷の外からでも分かるくらいどよーんと空気が淀んでいました。

「どうも、ゴーマン伯爵家の悪事が広まって、色々な人の怨みなどが一気に集まっちゃったみたいなのよ。これ程の怨みが集まるなんて、やはりゴーマン伯爵は代々あくどいことをしていたのね」

 シンシアさんがこうなっちゃった理由を教えてくれたけど、稀に大悪党の貴族が捕まるとこういうことが起きるみたいです。
 そして、ゴーマン伯爵家への怨念が凄すぎてたくさんのよどみが集まってしまい、更に王都内のよどみまで集めてしまったみたいです。
 その結果、短期間で王都最強クラスの怨念だらけの屋敷が完成しました。

「あの、ヘンリーさん、シンシアさん。僕、一回で屋敷を浄化できる自信がないです……」
「無理にやらなくてもいい。取り敢えず封印はしているし、何回かに分けて浄化しても問題はない」
「それに、ある意味この屋敷に王都の中の怨念が集まったから、他の場所の怨念は薄くなっているはずよ」

 ヘンリーさんもシンシアさんも、目の前の屋敷を見て苦笑するばかりでした。
 こういうのは、直ぐに浄化するに限りますね。
 エミリーさんも今日は浄化魔法を使うみたいで、更にシアちゃんもパワーアップして浄化魔法が使えるようになりました。

 シュイン、ぴかー!

「グルル……」

 そして、ドラちゃんも最初から大きくなりやる気満々です。
 スラちゃんも魔力を溜めたので、僕たちは一気に全員で浄化魔法を放ちました。

 シュイン、シュイン、シュイン、ぴかー!
 ズゴゴゴゴ……

「うっ、ぐぐっ……」
「こ、これは凄い手応えだわ……」
「グルル……」

 僕たち全員で全力の浄化魔法を放っているんだけど、とにかく手応えが凄すぎます。
 まるで、ゼリーみたいな濃密な怨念を相手にしているので、本当にちょっとずつしか浄化できません。
 それでも、ほんの少しずつだけど確実に浄化していきました。

「「はあはあはあ……」」
「キュー……」

 そして、三十分かけて何とか殆どのよどみを浄化し終えました。
 流石にフルパワーの浄化を行ったので、僕たちはぺたりと座り込んじゃいました。
 ドラちゃんも疲れちゃって大きい姿から小さくなっている中、スラちゃんとシアちゃんがぴょーんと屋敷の中に入って行きました。

「あっ、スラちゃんが何だかおかしいってことで屋敷の中を調べるそうです」
「実際に浄化を目の前にして、ちょっと異常だと私も判断した」
「そうね、私もそう思うわ。それに、怨念に紛れてダークシャドウも感じたわ」

 ヘンリーさんとシンシアさんも、この状況は流石におかしいと判断したみたいです。
 確かに、よどみの集まっている建物を浄化した時よりも、手応えが凄かったんだよね。
 
 ダッ!

「「アンアン!」」
「見つけた! 待ちなさい!」
「ぐっ……」

 すると、周囲を警戒していたナンシーさんが、クロちゃんとギンちゃんと共に屋敷の周囲に隠れていた人を発見しました。
 どうも、クロちゃんもギンちゃんも、目の前の屋敷のよどみが強すぎて、悪い人を嗅ぎ分けられなかったみたいです。
 それが、殆どのよどみを浄化できたので、ようやく周囲の悪い人の臭いを判別できたようです。

「近衛騎士も、不審者を捕らえるように」
「「「はっ」」」

 ヘンリーさんは通信用魔導具で増援を依頼しつつ、近衛騎士にも指示を出していました。
 僕とエミリーさんは疲れちゃって動けないけど、念の為に周囲の警戒をします。
 キキちゃんが、僕たちを守るように側にいてくれますね。

「ゴーマン伯爵は、あの世に行っても私たちに迷惑をかけるわね……」

 エミリーさんがゴーマン伯爵に文句を言っていたけど、このよどみを呼び寄せた犯人はゴーマン伯爵じゃないと思うよ。
 そして、少しすると一気に事態が動きました。