翌日、朝一番でドラちゃん便に乗ってお母さんとカエラとキースがオラクル公爵家にやってきました。
 お母さんは冒険者服を着ていて、最初からお手伝いする気満々ですね。

「あー! ナオにーにのママだー!」
「ふふ、ルルちゃんよく覚えてくれていたわね」
「うん!」

 屋敷に入ると、直ぐにルルちゃんがお母さんの足に抱きつきました。
 新年とか他の機会でも何回かお母さんと会っているけど、ルルちゃんは記憶力がとても良いんだね。
 そして、お母さんはそのままナンシーさんにも挨拶をしました。

「娘にわざわざ招待状を送って頂き、本当にありがとうございます。娘も、わざわざ招待してくれてとても喜んでいましたわ」
「こちらこそ、いつもサマンサさんにはお世話になっております。昨日も色々と助けて貰いましたわ」

 お母さんって、偉い人でも関係なく普通に挨拶をするよね。
 礼儀作法はしっかりとしているし、本当に凄いよね。
 準備ができたところで、僕たちは大教会に向かいます。
 ちなみに、セードルフちゃんはスラちゃんを、ルルちゃんもドラちゃんを馬車内で抱いていて既にやる気満々です。
 そして、大教会に着いたらお母さんは王族らしいドレスを身に纏ったエミリーさんに挨拶をしていました。

「エミリーさん、いつも息子を良くしてくれてありがとうね。根は優しい子なんだけど、ちょっと、いやかなりニブチンな息子なのよね」
「お義母様、大丈夫ですわ。そこも考慮して、押す時には押していきますわ」
「ふふ、あの子は気に入った人には無自覚で優しいのよ。鈍感でニブチンだけど、きっとエミリーさんのことは気に入っているわ」

 あの、お母さん……
 本人を目の前にして、ニブチンニブチンって連呼しないで下さいよ。
 流石に僕も凹みますよ……
 セードルフちゃんに抱かれたスラちゃんも、うんうんと頷かないで下さい。

「ふふ、優しいお母様に育てられたからこそ、ナオ君は良い子に育ったのですね」
「離れていた一年間はありましたが、こうして素直に育ってくれて母親として安心しております」

 更にお母さんは、シャーロットさんともにこやかに話をしていました。
 そして、そのまま小さい子たちの面倒を見始めました。
 アーサーちゃんとエドガーちゃんも、僕のお母さんに懐いています。
 うーん、これで地元では最強の冒険者なのだからお母さんはよく分からないですね。
 そして、今日は僕たちよりも、クロちゃん、ギンちゃんが大活躍していました。

「「ワンワン!」」
「あっ、こんなところにいたぞ!」
「ぐっ、何で分かった!?」

 大教会の前に隠れていた犯罪組織の構成員を、クロちゃんとギンちゃんが片っ端から見つけていきます。
 兵も忙しそうに動いているけど、そのおかげでたくさんの犯罪組織の構成員を検挙できました。

「仮にゴーマン伯爵がエミリーさんを誘拐しようとしても、その前にクロちゃんとギンちゃんが悪い人を全部捕まえちゃうかもしれませんね」
「この様子を見ると、そんな感じがしてきたわ。クロちゃんとギンちゃんの壁を破っても、私たちなら普通に撃退できるわね」

 次々と連行される犯罪組織の構成員をエミリーさんと見ていたけど、ゴーマン伯爵の野望は最初から無理がありましたね。
 さてさて、僕たちは連行される犯罪組織の構成員ではなく、目の前で困っている人たちのために動かないとね。
 エミリーさんとドンドンと野菜を切っていると、お母さんとマリアさんが何か話をしていました。

「ふふ、二人とも仲良さそうにしていますわね。まだまだ子どもですけど、親として一安心です」
「ナオ君はとても気遣いのできる子ですけど、エミリーの前では段々素の姿を見せてきましたわ。とても良い傾向ですね」

 よく聞こえなかったけど、僕とエミリーさんの話をしているのは何となく分かりました。
 うん、特に気にしないで起きましょう。
 無料治療もちびっ子たちが張り切ってやってくれたので、とっても好評でした。
 それに、炊き出しも美味しいって言ってくれてとっても好評です。
 こうして、無事にお昼過ぎには奉仕活動が終了しました。
 警備も厳重にしていたし、クロちゃんとギンちゃんがとても張り切っていたので不審者は尽く捕まえました。

「本当に、ナオ君のお母さんにはお世話になりました。孫のことを気にかけてくれましたし、こうして無事に奉仕活動を終えることができましたわ」
「私の息子と娘も治療をしていましたし、私もとても勉強になりました。これからもどうぞ宜しくお願いします」

 無事に奉仕活動が終わったので、シャーロットさんとお母さんがお礼の言い合いをしていました。
 何にせよ、無事に終わったのが何よりの成果ですね。
 お母さんとカエラとキースは、夕方前にドラちゃん便で実家に帰って行きました。
 明日からは本格的にゴーマン伯爵への聴取が始まるし、また頑張らないといけないね。