ごちゃごちゃした庭に馬車は入っていき、玄関前に到着しました。
 うーん、やっぱり庭には奇妙で意味分からない彫刻がたくさん置いてありますね。

「なんというか、悪趣味な彫刻ね。前衛的でもないし、美的センスが理解できないわ」
「「アンアン」」

 馬車から降りて周囲を呆れながら見ていたエミリーさんに、クロちゃんとギンちゃんも同意していました。
 スラちゃんとシアちゃんも、訳が分からないって感じですね。
 そんな屋敷の玄関は開いていて、兵が忙しそうに行き来していました。

「報告いたします。屋敷は制圧済みで、伯爵夫人は、兵への傷害で捕縛しております」
「どうやら、派手に暴れたみたいだな。貴族の中の貴族なのだから、捕まることはないと叫んでいたのだろう」

 ヘンリーさんが兵から報告を受けていたけど、なんというか呆れてしまう内容でした。
 でも、そのおかげで捜査の邪魔をする人は全員捕まったんだね。
 では、さっそく皆で執務室に向かいましょう。
 すると、執務室は書類が散乱していてごちゃごちゃなところでした。
 うーん、整理整頓が全く出来ていませんね……

「これは、重要書類を見つけるのも大変だね。スラちゃん、クロちゃん、ギンちゃん、一緒に頑張ろうね」
「「アンアン!」」

 大変なところだけど、頑張らないと事件は解決しないもんね。
 ということで、クロちゃんとギンちゃんが怪しいと判断した書類を中心に仕分けをしていきます。

「アン!」
「クロちゃん、ありがとう。えーっと、これは毒の出どころを示した資料だね。どこかの犯罪組織っぽいね」

 クロちゃんが見つけてくれた資料を、僕はスラちゃんと一緒に眺めていました。
 この資料は、ゴーマン伯爵の罪を裏付ける重要な書類ですね。
 直ぐに、書類をヘンリーさんに渡しました。

「ふう、犯罪組織と繋がって毒を手に入れるなんて。後は、手に入れた毒をどのように使おうとしたのかを問い詰める必要があるな」

 ヘンリーさんは色々な事例を考えていたみたいだけど、確かにあの毒ナイフをどこで使おうとしたのかが重要ですね。
 すると、今度はギンちゃんが怪しい書類を見つけたと教えてくれました。

「アン!」
「ギンちゃん、ありがとうね。えーっと、これはブレアさんとナンシーさんの結婚式での予定ですね。あっ、僕とシャーロットさんを殺害すると書いてあります!」
「自分に邪魔なものを排除するために、とんでもないタイミングで事件を計画しているな。計画の為に毒ナイフを手に入れていたのなら、既に殺人未遂の準備罪が適用されるぞ」

 流石にヘンリーさんも、この資料に書いてある内容を見て怒りを隠せません。
 王家の結婚式をぶち壊しにするだけでなく、王太后様のシャーロットさんを殺害しようとするなんて。
 スラちゃんもぷりぷりと怒っているけど、更にとんでもない資料をシアちゃんが見つけました。

「シアちゃん、ありがとうね。えっ、私の誘拐計画ですって? しかも、私を無理矢理傷者にすれば王家もゴマスリーの嫁だと認めるはずだって書いてあるわね。しかも、計画決行日が明日になっているわ」
「これは、犯罪組織の名前も書いているな。直ぐに軍に調べさせよう」

 なんというか、エミリーさんもヘンリーさんも呆れてものが言えないレベルですね。
 しかも、事件の決行場所が大教会になっています。
 実は、明日は元々何も予定がなければ僕たちはシャーロットさん主催の大教会での奉仕活動を予定しています。
 スケジュールを公表しているとはいえ、流石にこの計画はあり得ないですね。
 他にも気に入らない貴族への殺害計画や、前の貴族不審死に関する書類など、とんでもない資料がたくさん出てきました。
 そのために、兵がとても忙しく執務室から書類を運び出していました。
 ヘンリーさんも逐一通信用魔導具で連絡を送っていたけど、どんどんとゴーマン伯爵の罪が膨れ上がっていくね。

「取り敢えず、執務室はここまでだな。ざっと、屋敷の中を歩いて調べるぞ」
「「はい!」
「「アン!」」

 こうして執務室の中は調べ終わったので、僕たちはヘンリーさんの合図で執務室を出ました。
 しかし、実はここからが本番だと僕たちは知りませんでした。

「ヘンリー様、大変です。毒ナイフの試し切りを受けた使用人がいますので、治療をお願いします」
「直ぐに行く。ゴーマン伯爵は、いったい何ということをしたのだ!」

 兵の報告を聞いたヘンリーさんの怒りが、遂に爆発しちゃいました。
 かくいう僕たちも、とっても怒っています。
 僕たちは、急いで使用人のいる部屋に向かいました。