シュイン、ズドーン!

「「「ギシャー!」」」

 時々森からゴブリンが出てくるけど、土魔法や風魔法を使って一気に倒していきます。

「せい、やあ!」

 ブオン、バシン!

「「「ギャッ……」」」

 格闘技を得意とするサマンサお姉ちゃんにとって、この乱戦は得意中の得意でした。
 うーん、一人でとんでもない数のゴブリンを殴り飛ばしているよ。
 ドラちゃんも強力な聖魔法を使ってゴブリンを倒しているけど、十分もすると町に現れたゴブリンの数は少なくなった。

 シュイン、もわーん。

「うーん、まだ森の中に反応が残っています。もしかしたら、僕たちの様子を伺っているかもしれません」
「なら、今のうちに体勢を立て直す。あと、私はこの町の代官に会いに行かないとならない」

 僕たちが乗ってきた馬車に、ヘンリーさんとシンシアさんとスラちゃんが乗り込んで町の中に入って行きました。
 その間に、僕とエミリーさんとドラちゃんで怪我人を治療していき、ナンシーさんとシアちゃんが大量のゴブリンの後片付けを始めていた。
 森で何か動きがあってもいいように、クロちゃんとギンちゃんとキキちゃんが周囲を確認していました。

 シュイン、ぴかー。

「はい、これでいいですよ。でも、なんでゴブリンとかが町を襲ったのでしょうか?」
「間違いなく、代官の野郎のせいだ! 害獣駆除の討伐の依頼を減らしたから、そのせいでゴブリンが増えているんだ」

 僕が治療した冒険者が吐き捨てるように言ったけど、わざと害獣駆除の依頼回数を減らしているのなら大問題だよ。
 現に、温泉地の代官は規定以上の害獣駆除を依頼しているのだから。
 もしかしたら、飢えたオオカミが増えた原因の一つに、麓の町での害獣駆除の回数が減ったのがあるかもね。
 でも、このままにしては温泉地も麓の町も大打撃を受けるし、何とかしないといけません。

「「ワンワン!」」

 ここで、クロちゃんとギンちゃんが僕たちに危険が迫っていると教えてくれたよ。

 シュイン、もわーん。

 探索魔法で周囲を確認すると、とんでもないことが判明した。

「ゴブリンの群れが、何かに追われてこっちにやってきます!」
「恐らく、血の匂いを嗅ぎつけた動物か魔物ね。こうなったら、徹底的にやるわよ」

 ナンシーさんの激励に、僕たちは気合を入れ直します。
 そして、僕は魔力を溜め始めました。

「広範囲魔法を打ち込みます。打ち漏れがあったら、撃退して下さい!」
「ナオ、こっちのことは気にしなくていいわ。ナオは、ナオの仕事を頑張りなさい」

 サマンサお姉ちゃんが何も問題ないって言ってくれるのも、とてもありがたいよね。
 守備隊員と冒険者も、任せろと言っていました。

 ガサガサ、ガサガサ。

「「「キシャー!」」」
「「「ガルル!」」」

 すると、森からゴブリンとオオカミの大群が姿を現しました。
 もしかしたら、もっと何かがいるかもしれない。
 そんなことを思いながら、僕は地面に手をついて一気に魔力を解放した。

「いっけー!」

 シュイン、シュイン、シュイン、グサササ!

「「「グギャー!」」」

「もう一回!」

 シュイン、シュイン、シュイン、グサササ!

「「「グギャー!」」」

 僕は、広範囲のアースニードルを出現させ、更に時間差でもう一回アースニードルを出現させた。
 二回に及ぶ広範囲魔法攻撃に、ゴブリンとオオカミの殆どが息絶えていた。
 でも、まだまだ魔物の襲撃は収まりません。

「グオオオオー!」

 今度は、一回りどころか二回り以上大きなゴブリンが森から姿を現したのです。
 巨大な木の棍棒を手にしていて、如何にも強そうな雄叫びを上げています。

「くそ、ゴブリンキングまでいるのかよ!」
「こりゃ、かなりヤバいことになっているぞ」

 守備隊員が思わず叫んでいたけど、ゴブリンキングはゴブリンなんか比じゃないくらい強いらしいです。
 そんなゴブリンキングがいるってことは、もしかしたらもっとゴブリンがいるんじゃないかと守備隊員は予想していました。
 でも、今は目の前に現れたゴブリンキングを倒さないと。
 僕は、魔力を極限まで圧縮しました。

「えーい!」

 シュイン、シュッ!
 ザクッ……

「……」

 ドシーン!

 あ、あれ?
 魔力を込めたエアーカッターをゴブリンキングの首目掛けて放ったら、あっさりとゴブリンキングの首を切断しちゃった。
 ゴブリンキングは、首から血を噴き出しながらそのまま大きな音を立ててうつ伏せで倒れました。
 うーん、意外とゴブリンキングって弱いのかもしれないね。

「流石はナオね、ゴブリン百匹以上に匹敵するゴブリンキングを、こうもあっさりと倒しちゃうとは。それに、ゴブリンキング (文章欠落)」

 えー!
 エミリーさんがニコニコしながら僕のことを褒めていたけど、ゴブリンキングってそんなに強いんだ。
 なんだか、思わずあわあわしちゃったよ。

 シュイン、もわーん。

「えっと、えっと、まだ何かの反応が森から出てきます」
「ふふ、ナオ君ったら必死になって誤魔化しているわね」
「それがナオの可愛いところですよ」

 ナンシーさんとサマンサお姉ちゃんが、ニヤニヤしながら僕のことを見ていたよ。
 実際に森から何かが来ているのは間違いないんだけど、僕は魔法を連発していたので補助に回ることになりました。
 僕に負けていられないと、多くの人がやる気満々でした。