翌朝、僕とドラちゃんは早く起きました。
 すると、枕元にスラちゃんが潜り込んでいました。
 きっと、夜遅くまで怪我人の治療をしていたんだね。
 僕とドラちゃんは、スラちゃんを起こさないように静かにベッドから起き出しました。

「ナオ君、ドラちゃん、おはよう」
「あっ、ナンシーさんおはようございます」
「キュー」

 僕が客室のドアを開けると同時に、隣の客室にいたナンシーさんも出て来ました。
 どうも、ナンシーさんの寝ていたベッドにもいつの間にかシンシアさんが潜り込んでいたそうです。
 疲れちゃったのか、熟睡しているそうです。
 お互いにちょっと苦笑しながら、僕たちはヘンリーさんのいる応接室に向かいました。
 すると、ヘンリーさんはソファーで横になっていました。
 きっと、ヘンリーさんも夜遅くまで調整をしていたんでしょうね。
 流石に起こしては駄目だと思ったので、食堂に移動して朝食を食べました。

「じゃあ、いってきまーす」
「気をつけてね」
「キュー」

 朝食を食べ終わったタイミングで護衛の兵が屋敷に来たので、僕はナンシーさんとドラちゃんに挨拶をして玄関に向かいました。
 すると、二人の若い兵が僕を出迎えてくれました。

「ナオ騎士爵様、お迎えにあがりました」
「え、えっと、普通に呼んで下さい。その、爵位呼びは慣れていないので……」
「はっ、畏まりました」

 な、何だかとっても緊張している兵だったけど、きっと大丈夫ですよね。
 僕はそう思いながら、兵と一緒に歩き始めました。

「うーん、やっぱり住宅へのダメージが大きいですね」
「それでも、皆さまが迅速に毛布や食料を持ってきてくれなければ、もっと悲惨な事になっていました。ナオ様にも、多くの重傷者を治療して頂き、本当に感謝しております」
「昨晩も、シンシア様が遅くまで怪我人の治療をして頂きました。皆さまの治療がなかったら町は死者で溢れてしまったのではと、思わずぞっとしました」

 この二人は実はこの町出身で、僕の護衛役にも自ら志願したそうです。
 昨日は無我夢中で治療をしていたけど、周りの人は僕たちのことを見ていたんですね。
 あと、僕が有名な理由がもう一つあるそうです。

「その、竜使いの騎士様の二つ名で言われております。実際に、竜使いなのは間違いないですし」
「あの、実はドラちゃんの保護者は僕といつも一緒にいるスライムなんです。今日はヘンリーさんの補助をするので、一緒に行動しませんけど」
「「えっ!」」

 うん、誰だってドラゴンの親代わりがスライムって言われたら驚くよね。
 しかし、僕にそんな二つ名ができていたなんて、とってもビックリです。
 なにせ、本人が知らないのですから。
 その他も色々なことを話しながら、一つ目の土砂崩れ現場に到着しました。

「わあ、多くの土が街道に流れちゃっています!」

 最初の現場では、崖が高さ十メートル幅二十メートルに渡って崩れていました。
 街道に大量の土砂が流れているけど、このままでは崖も再び崩れそうです。
 なので、事前にヘンリーさんに教えてもらった方法を使います。

 シュイン、シュイン、ゴゴゴゴ。

「「おお……」」

 まずは崖崩れの元のところの土を念動で取り除き、街道に流れ出た土砂を圧縮してカチンコチンのブロックにして、どんどんと土砂崩れ現場に念動で運んでいきます。
 この際に、ただ積むだけじゃなくて互い違いに積むのがポイントらしいです。
 こうすると、ただ積むよりも崩れにくくなるそうです。
 こんな感じで、土砂をどんどんと積み上げていきます。
 更に、崖も亀裂が入っているところとかがあるので、そこも崩れないように補修していきます。
 最後に、街道にも亀裂が入っているところがあるので、平らに仕上げます。

「ふう、こんな感じで良いでしょうか?」
「えっ、はっ、はい。全く問題ありません」
「凄い、僅か三十分で土砂崩れが直ってしまった……」

 僕も、良い感じに修復できたと思います。
 待機していた馬車も通行を開始したし、これで街道の一つが復旧しました。
 では、今度は次の場所に向かいましょう。
 今度は別の街道で、ここは地震の為に段差が起きていました。

「このくらいなら、直ぐに直ると思います。念の為に、周辺も補強しますね」

 僕は兵にそういうと、地面に手をつきました。

 シュイン、シュイン、シュイン、もこもこもこ。

 今度は、段差になっているところを土魔法で削っていき、地面を平らにします。
 他にも段差になっているところがあるので、まとめて平らにします。
 幸いにしてこの街道には崖とかはないので、時間も短縮できます。
 今回は、十分で街道の復旧が終わりました。

 バサッ、バサッ、バサッ。

 すると、上空を大きな姿になったドラちゃんが通過しました。
 ヘンリーさんもスラちゃんも、少しは休めたかな。
 そんなことを思いながら、僕たちは次の現場に向かいました。