無事にライブを成功した千絃へこうメッセージを送った。

『海で待ってる』

私は砂浜に1人立ち、海を眺めた。
波の音が大きく、こんなに海ってうるさいんだ。と感じてしまった。
とても強く潮の香りも漂ってくる。

「風奏!」
 千絃が私を呼んだ。
「、、、千絃」
 私は振り向き千絃を呼び返す。
「風奏!」
 千絃が私の目の前に勢いよく走ってくる。
「ありがとう!」
 千絃はそう言いながら私を抱きしめた。
「え!?」
「ありがとう、来てくれて、、、」
 もう一度私を抱きしめてから抱擁を解いた。
「俺、、、不安で不安で、いっぱいだった。けどさ、風奏がいるから大丈夫だ、って思えた」
 風奏が聴いててくれたから、大丈夫だった。と恥ずかしそうに呟いた。

「最高な歌だったよ。感動して泣いちゃった。こちらこそありがとう」
 私の言葉に千絃が息を呑む。
「FIGHT SONGの本当の意味って、、、」
 私が言いかけると突然千絃が制して
「風奏への応援ソング」
 そう言った。
「私が、ピアノ、、、また弾けなくなっちゃったから?」
「、、、あぁ」

私は、ヒナと再会した駅ピアノの演奏の後、また弾けなくなったのだ。
今回は完全にピアノを弾こうとすればするほど手が重くなり、一音も弾けない。
病院に行ってこの病気の治療を続けている。

「、、、きみが奏でるピアノの音は悲しくて優しくて、綺麗だった。その音は僕の希望の光なんだ。たとえ、きみが奏でられなくても、僕がかわりに奏でるから。ずっと僕の心に響いてるきみの音を、きみのために、奏で続ける。奏で続けて、、、待ってるから、、、」
FIGHT SONGをもう一度歌ってくれた。

「俺、、、絶対に耳が聞こえるようになる、大丈夫、なんてやっぱり言われたくない。風奏も、確証のない慰めなんていらねぇだろ?だから、今の、風奏に向けての想いを、歌った。俺は風奏の音に救われた。きみの奏でる音に希望を感じた」
 千絃が海を眺めながら真剣に話している。
と、私の方に目を向け、真っ直ぐな視線を送ってきた。
「今度は俺が希望を奏でたい。だから俺は、大好きな風奏への希望の詰まった希望歌を、歌い続ける」
「千絃、、、」
「ずっと、、、待ってるから。、、、ずっとそばにいるから」
 少し頬を赤く染め、千絃が微笑んだ。
「ありがと。私、ずっと、、、ずっと、千絃の歌を聴き続けたい。そしてまた、一緒に希望歌(ファイトソング)を奏で続けよう」
 嬉しそうに千絃がにこりと笑みを浮かべ、私の手を取った。
見つめ合い、微笑む。
そして一緒に歌い出す。

「「だから奏で続ける、、、君への希望歌(ファイトソング)を。、、、いつまでも、、、いつまでも」」

 私と千絃の歌声が海に向かって響いていた、いつまでも。




───了