「あの、英子、、、ちゃん?」
 引っ張られるように廊下を歩いていた私は思わず声をかける。
「、、、え?な、名前!?」
 英子は何故か名前を呼んだことに驚きながら振り向いた。
「あ、、、ごめん。苗字で呼んだ方が」
「うんん!違う!名前でいいよ!英子って呼び捨てで。あ、あたしも、風奏って、呼ぶから」
 謝った私に慌てて言葉を重ねた。
「え、あ、うん、、、あの、なんで、名前知ってるの?」
「え、、、?」
 見るからに落胆したような顔をした。
私、何か言ったらいけないこと、言っちゃったかな、、、。
私は慌てて何か言おうとすると
「なんでって、学級委員だからに決まってるでしょ?」
 明るく私に笑顔を向け、そう言った。
「、、、そ、そっか。そうだよね」
 私も口角を上げる。
でも、英子の笑顔がとても寂しそうに見えてしまった。
そして、その訳はわからなかった。

「あの、もう、大丈夫だから。1人で保健室行くから」
 慌てて話題をそらせる。
というか私は元々この話をしたかったのだが。
「え?行くわよ。すぐそこだし」
 不思議そうに指を指す。
確かに保健室は、向かいの棟の一階だ。
「でも、英子ちゃん授業あるでしょ?」
「でも、、、。そ、そうよね。しっかり、休んでね」
 まだ付き添いたそうだったが、最終的には英子が折れてくれた。
でも、また寂しそうに目を伏せた。
 その姿に私は思わず目をそらしてしまう。
「あ、ありがとう、英子ちゃん」
「、、、英子でいいって、風奏」
「うん、ありがと、英子」