少し心にモヤモヤが残ったがピアノに向かい気分を落ち着けようと鍵盤に触れた。
軽く息を吸いピアノを押す。
「ッ!!」
ものすごく、大きく音が響いた。
すごく、綺麗な音が広場全体に響き渡った。
ずっと聴いていたい、そう思った。
でも、、、やっぱりダメだった。
いつもより早く、私の手は止まってしまった。
「風奏、今の音、めちゃくちゃ良かったぞ」
すげぇ、と感嘆の声を上げながら千絃が手を叩く。
「、、、でも、いつもより早く止まっちゃた」
「だな。でもまだ時間はあるんだから。ゆっくりでいいだろ」
さっきの音に興奮しているのか千絃が声を高くしながら言ってくれる。
みんな、私のために、たくさん応援してくれている。
「、、、みんな、ごめん」
思わず小さく呟く。
「、、、お前、今何か言った?」
「うんん、言ってない」
「、、、そうかよ」
何故かその時の千絃が辛そうに見えた。
それから何度か時間を空けてピアノを弾こうとしたが、最後までどころか序盤で止まることもしばしばだった。
「千絃、ありがとう、連れてきてくれて」
「は?わざわざなんだよ」
「、、、うんん、ありがとう」
◇◇◇
夏休みの間、一生懸命練習したのだが、私はピアノを一度も弾ききることができなかった。
そして、、、文化祭当日も、そばで千絃や英子、律が見守っていてくれたのにも関わらず、最後まで弾くことができなかった。
ステージは海先輩の素晴らしい歌声のおかげで大成功だったが、途中で止まるピアノの音に一定数の人は不信感を抱いていた。
本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
だから私は音楽室で先輩に謝ろうとしていた。
「、、、ごめんなさい、海先輩。最後まで、、、」
「風奏ちゃん、ありがとう!」
謝ろうとした途端海先輩は私の手を握り締め縦にブンブンと振る。
「え、、、海先輩?」
「本番の音、ものすごく良かった!今までで聴いた中で、1番綺麗な音だった!風奏ちゃんにお願いして本当に良かったよ!本当にありがとう!」
「、、、先輩」
1番綺麗な音。
言われたくない言葉だったのに、、、ずっとピアノを弾いて、最後まで弾けるように頑張ってきた私にとっては、言われてとても嬉しい言葉になった。
夏休みの間、頑張ってきたのに、海先輩と最後まで演奏することができなかった。
ルイスさんの最高な曲を、私の最高な音で演奏することができなかった。
「今まで、、、頑張ってきたのに、どうしてなんでしょう?、、、どうして弾き切れないの?」
私は思わずずっと抱えてきた気持ちを吐き出した。
海先輩の思わぬ言葉で私の涙腺も、心も、限界を迎えた。
「ずっと、弾けるようにって、、、頑張ってたのに、なんで、、、。みんなも、応援してくれて、本当に感謝しているのに、それに報いることができなくて」
私の頬を涙が濡らした。
「風奏ちゃん、、、」
私を黙って海先輩が抱きしめてくれた。
「私は黙ってるから。何も言わんから、大丈夫、全部涙に流してしまい」
あたたかい海先輩の声は私の心をどんどん溶かしていく。
涙が溢れ出す。
海先輩が私の背中をさする感触しかわからなくなっていった。
「落ち着いた?」
海先輩がお茶を差し出し、訊く。
「はい、ありがとうございます」
私は頷きながら受け取る。
「、、、そういえばちづくんはどうしたの?」
「見てないですね、そういえば」
私が首を傾げているといきなり音楽室の扉が開いた。
「風奏、、、ごめんな」
ものすごく辛そうな、今まで見たなかで一番辛そうな表情だった。
「え?どうしたの?何がごめん、、、なの?」
私は訳が分からず、戸惑いの声を上げる。
泣いた後なので声も酷く掠れている。
「、、、俺、もうお前と会えねぇ」
「、、、え?何で?」
「、、、今まで、本当にごめん」
それだけ言った後、千絃は勢いよく音楽室から出ていった。
「千絃!」
そう叫んだけど千絃はもう何処かへ行ってしまった。
私は千絃を追いかけることができなかった。
軽く息を吸いピアノを押す。
「ッ!!」
ものすごく、大きく音が響いた。
すごく、綺麗な音が広場全体に響き渡った。
ずっと聴いていたい、そう思った。
でも、、、やっぱりダメだった。
いつもより早く、私の手は止まってしまった。
「風奏、今の音、めちゃくちゃ良かったぞ」
すげぇ、と感嘆の声を上げながら千絃が手を叩く。
「、、、でも、いつもより早く止まっちゃた」
「だな。でもまだ時間はあるんだから。ゆっくりでいいだろ」
さっきの音に興奮しているのか千絃が声を高くしながら言ってくれる。
みんな、私のために、たくさん応援してくれている。
「、、、みんな、ごめん」
思わず小さく呟く。
「、、、お前、今何か言った?」
「うんん、言ってない」
「、、、そうかよ」
何故かその時の千絃が辛そうに見えた。
それから何度か時間を空けてピアノを弾こうとしたが、最後までどころか序盤で止まることもしばしばだった。
「千絃、ありがとう、連れてきてくれて」
「は?わざわざなんだよ」
「、、、うんん、ありがとう」
◇◇◇
夏休みの間、一生懸命練習したのだが、私はピアノを一度も弾ききることができなかった。
そして、、、文化祭当日も、そばで千絃や英子、律が見守っていてくれたのにも関わらず、最後まで弾くことができなかった。
ステージは海先輩の素晴らしい歌声のおかげで大成功だったが、途中で止まるピアノの音に一定数の人は不信感を抱いていた。
本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
だから私は音楽室で先輩に謝ろうとしていた。
「、、、ごめんなさい、海先輩。最後まで、、、」
「風奏ちゃん、ありがとう!」
謝ろうとした途端海先輩は私の手を握り締め縦にブンブンと振る。
「え、、、海先輩?」
「本番の音、ものすごく良かった!今までで聴いた中で、1番綺麗な音だった!風奏ちゃんにお願いして本当に良かったよ!本当にありがとう!」
「、、、先輩」
1番綺麗な音。
言われたくない言葉だったのに、、、ずっとピアノを弾いて、最後まで弾けるように頑張ってきた私にとっては、言われてとても嬉しい言葉になった。
夏休みの間、頑張ってきたのに、海先輩と最後まで演奏することができなかった。
ルイスさんの最高な曲を、私の最高な音で演奏することができなかった。
「今まで、、、頑張ってきたのに、どうしてなんでしょう?、、、どうして弾き切れないの?」
私は思わずずっと抱えてきた気持ちを吐き出した。
海先輩の思わぬ言葉で私の涙腺も、心も、限界を迎えた。
「ずっと、弾けるようにって、、、頑張ってたのに、なんで、、、。みんなも、応援してくれて、本当に感謝しているのに、それに報いることができなくて」
私の頬を涙が濡らした。
「風奏ちゃん、、、」
私を黙って海先輩が抱きしめてくれた。
「私は黙ってるから。何も言わんから、大丈夫、全部涙に流してしまい」
あたたかい海先輩の声は私の心をどんどん溶かしていく。
涙が溢れ出す。
海先輩が私の背中をさする感触しかわからなくなっていった。
「落ち着いた?」
海先輩がお茶を差し出し、訊く。
「はい、ありがとうございます」
私は頷きながら受け取る。
「、、、そういえばちづくんはどうしたの?」
「見てないですね、そういえば」
私が首を傾げているといきなり音楽室の扉が開いた。
「風奏、、、ごめんな」
ものすごく辛そうな、今まで見たなかで一番辛そうな表情だった。
「え?どうしたの?何がごめん、、、なの?」
私は訳が分からず、戸惑いの声を上げる。
泣いた後なので声も酷く掠れている。
「、、、俺、もうお前と会えねぇ」
「、、、え?何で?」
「、、、今まで、本当にごめん」
それだけ言った後、千絃は勢いよく音楽室から出ていった。
「千絃!」
そう叫んだけど千絃はもう何処かへ行ってしまった。
私は千絃を追いかけることができなかった。



