「綺麗だな、、、」
 私は公園で頭上に広がる青空を眺めつぶやく。
「私の指、どうしちゃたんだろう」
 空に手をすかしてみる。
いつも通り、変わらない指なのに。
ピアノだけが弾けないなんて。

「風奏!お待たせー!また学級委員会が長引いちゃって!」
 英子の明るい声が聞こえた。
「英子、お疲れ様」
「もう、夏ね〜!ってか、夏休みの予定決めた?」
 英子が隣に座りながらワクワクした様子で聞いてくる。
「夏休み?まだ一ヶ月以上あるけど?」
「え?!もう一ヶ月前よ!ちゃんと予定立てなくちゃすぐ過ぎちゃうのよ!」
 夏休み遊ばなくてどーすんのよ!と興奮気味な英子。
「でも、私ピアノのことで頭がいっぱいだから。そういう英子はりちくんとデート行かないの?」
「、、、え?!で、ででデート?なんで?」
 私の言葉にものすごく驚いた様子で立ち上がっている。
「あれ?付き合ってるんじゃないの?」
「えぇ?なんで知ってるの?」
 、、、わかりやすい。と内心呆れながら説明してあげる。
「だって、りちくんが千絃に言ってたのを聞いたから」
「、、、律くん、、、ちづくんが付き合うまで秘密にしよって言ったのに、、、」
「ん?何て?」
「いやいやいや、こっちの話」
 慌てたようにブンブンと首を振る英子。
「夏休み、一緒に遊ぼうね」
 私はニヤッと英子に笑いかけた。
一瞬、英子が目を開いたが、すぐに微笑んで
「うん!」
 と嬉しそうに頷いた。