その日の授業、私は動悸が激しくなるのがわかった。
「潮見さん、しんどくなったの?保健室行く?」
 先生が心配するように訊いた。
「いえ、、、大丈夫です」
 短く答える。

国語の授業の現代文が、ある女子2人が些細なことから喧嘩をしてしまう、というような内容だった。
それを読んでいるうちに気分が悪くなってしまったのだ。
元々活字が苦手だ。
しかも、、、。

「潮見さん、本当に顔色が悪いわ。保健室行こう」
 突然凛とした声が教室に響いた。
「え、、、」
 机の上から目線を上げると、そこには学級委員の英子が立っていた。
「大丈夫だよ?」
 心配をかけたくなくて微笑んで見せたが英子は首を振った。
「行こう」
 静かだけど、有無を言わせないような迫力があった。
「あ、、、うん」
 私が頷いたのを見て英子は少しホッとしたように息をついた。

「先生、私、潮見さんの付き添いに行きます」
 ハッキリとそう言い、私の手を取った。
教室では、「あの2人って仲良いの?」などという声が聞こえてきたが、英子は私を安心させるように、力強く手を握った。