「そうだ、このまま英子ちゃんの家、行っちゃう?」
 律がいきなりそう言った。
「英子ちゃん、風邪ひいちゃって今日は休みみたいだよ。さっき連絡が来たんだ。だから、これからお見舞い行こうかなって」
 律の続けた言葉に私は胸を撫で下ろす。
「風邪だったんだ。もう、大丈夫なの?」
「ずっと寝てて連絡に気付かなかったけど、今はもう熱は下がったみたいだし」
 律が安心したように言う。
「、、、じゃ、行くか」
 千絃も賛成し、私たちは学校を早退し、英子の家へと向かった。

「ねぇ、本当にサボってよかったの?千絃はいつものことだけど、りちくん生徒指導の先生に目をつけられてるとか?」
「おい、うるせぇよ!」
 千絃が吠えているが気にせず続ける。
「あ〜大丈夫。俺、こう見えてもね、勉強は英子ちゃんに引けを取らないから」
 得意そうに鼻を高くする。
「え!そうなんだ!」
 ピアスも開けて、髪も少し明るくしてる見た目なのに、意外と優等生なんだ。
意外な事実に間抜けな声が出てしまう。
そんな他愛もない話をしていたら、2人は立ち止まり
「じゃあ風奏、俺ら此処で待ってるから」
「英子ちゃんの家、あの白い壁の家だから」
 小さな広場になっている場所に座り込んだ。
「え?ついてこないの?」
「俺ら内密でバンドのこと話さなきゃいけないんだ。だから代わりに英子ちゃんにお大事にって伝えといて!」
 律のあからさまな態度に私は気づいた。

私と英子の仲直りのために、私の過去の話を聞いたり、学校をサボってまで英子に会わせたりしてくれたってこと?

「あ、ありがとう」
 2人の優しさに胸を掴まれた気分になった。
声が少し掠れてしまったが笑顔を見せることができた。
2人も照れながら微笑んでいた。