「おはよう!」
 誰かが誰かに挨拶する声が聞こえた。
「おはよ〜!」
 今度は近くで大きく聴こえた。
「、、、?」
 私は不思議に思って立ち止まり、辺りを見回す。
 私のそばに、背が高く、長い髪を下ろしている女子がいた。
「え、えっと、、、」
「おはよう」
 戸惑っている私に挨拶をしてきた。
「お、おはよう」
 私は慌てて頭を下げる。
「そんなかしこまらなくても。潮見さん、昨日早退したみたいだけど、今日はしんどくない?」
 私の反応に少し寂しそうな顔をしたあと、そう訊いた。
「え?!、、、あ、はい」
 この子、そう言えば同じクラスの子、、、確か学級委員の。
と名前を思い出そうとしたけれど出てこない。
申し訳なく思って慌てて
「大丈夫だから。ちょっと風邪気味だっただけだよ」
 と明るく答えた。
「、、、そう、よかったわ!」
 何か言いたげな仕草をしたが、安心したように笑顔になった。
 学級委員だから、クラスのみんなに目を向けてるんだ。偉いな。
と感心しながら私は横目で眺める。

「おはよう!」
 とまた違う声が聞こえた。
(うみ)先輩!おはようございます!」
 学級委員の子が手を振りながら返事をした。
「潮見さん、体調気をつけてね」
 そういうと走って海先輩と呼んだ女の子のそばへ走っていった。
「え?あ、うん。ありがとう」
 その背中に言葉を投げかけた。
 届いていたようで、一瞬振り向き、にこりともう一度笑ってくれた。

英子(えいこ)!今日までの課題、終わらせた?」
「もちろん!バッチリですよ」
「あれ?昨日わたしにどうやってこの計算解くんですか〜って訊いてきたくせに」
「あ、あれは、、、」
 海先輩は学級委員の子のことを英子と呼んだ。
英子ちゃん、、、っていうんだ。
自分の心配をしてくれたのに、名前を覚えていなかったなんて申し訳ない。
あと、会話は変じゃなかったかな。
内心会話を反芻する私。
何故か心がチクリと痛むのがわかった。