「あ!いたいた!ごめん遅くなって!学級委員会が長引いちゃって!」
 と今度は明るい英子の声が聞こえた。
「、、、って風奏?!何で此処に?」
 私もその言葉を返したい。
英子もこの公園に集合するなんて思っても見なかった。
 私はいつもこの公園で千絃と話してることを英子に伝えた。
すると英子は何故か納得したように頷いた。
「あ、じゃあ最近律くんを置いて何処か行っちゃうのって風奏に会いに行ってたからなのね。ちゃんと練習しないといけないじゃない!もうすぐ、、、」
「英子ちゃんダメダメ!」
「ヒメ!何勝手に言ってんだよ!」
 英子の言葉に2人が慌てた。
「あ、そうだったったわね。ごめんなさい。つい」
 えへ、と笑う英子はとても子供っぽくて学級委員長の英子とは思えない。

「こいつ、口が軽かったり、たまに毒舌になったりするんだ。だから、ヒメ」
 と千絃が耳打ちしてくる。
「そ、そうなんだ、、、」
「あ!ちづくん、今風奏に何か言ったでしょ?」
 もう、と頬を膨らませる英子。
仲の良さそうな3人を見て、口元が緩まる一方、心の奥がチクリと傷んだ。
「、、、?風奏、どうかしたの?」
 英子が首を傾げる。
と同時にハッとして
「もしかして、体調悪くなっちゃった?」
 と私に駆け寄って来た。
「うんん、大丈夫。、、、私、そろそろ帰らないと」
「いつも夕焼けが終わる頃までいるじゃねぇか」
 まだ始まってすぐだぜ、と千絃が夕焼けの方へ向いた。
「綺麗だね。、、、でもほんとに帰らなきゃ」
 私はチラリと見ただけで、鞄に視線を落とす。
じゃあ、またね、と声をかけようとした瞬間。
私の腕を千絃が掴んだ。
 地面を見つめる私にこう続けた。
「、、、こういう時、空見ろって言ってんだろ」
「ッ!?」
 私は視線をゆっくりと上げた。
「、、、綺麗、だね、、、」
 私は吸い込まれるように空を見入ってしまった。

茜色、橙色、青磁色、藍色。
太陽が山並みに消えようとしている。
その瞬間に放たれる色は、、、本当に鮮やかだった。
空自体がグラデーションになっていて、側にある雲も橙色、茜色に色づいている。

「すごい、、、。この世のものじゃ、ないみたいだね」
「あぁ。、、、同じ空はない。毎日毎日、変わっていく。」
 ため息をつき、千絃は前髪をかきあげた。
「、、、永遠じゃねぇから、、、綺麗なんだろうけど、それと、どう向き合っていくか。それが、、、難しいんだよな」
「、、、?」
 私は千絃の発した言葉に首を傾げる。
「足止めして悪かったな。、、、帰んなきゃいけねぇんだよな?」
 おずおずと声を発する千絃。
俺も練習しねぇとヒメに怒られるし。とぶつぶつ呟きながら髪を触っている。
「うんん。ありがとう、、、千絃」
「、、、どーいたしまして!」
 口角を上げ、得意そうに頷いた。
今度こそ私はカバンを持ち、みんなに手を振った。
またね!と口々に言った。

山際は渋い茜色、緑色、藍色のグラデーションになっていた。