私が和訳動画の再生ボタンをタップしようとした瞬間
「おーい!ちづ〜!」
 こちらに手を振り千絃の名前を呼ぶ男子が公園の奥から現れた。
私たちと同じ制服だった。

「いつまで休憩してんだよ。、、、って、もしかして、、、潮見、風奏ちゃん?だよね?」
 男子は背中に何か背負っていてそれを大事そうに撫でながら私に話しかけてきた。
「え、えっと、、、?」
「あ、そういえば風奏ちゃんと初めて喋るよね?名乗らないまま喋ってごめんね。俺、村雨(むらさめ)律。1年B組。よろしく」
「あ、えっと、、、よろしく」
 そういえば、英子が律くんと呼んでいた人なのかな、と思いながら答える。
「ちづとは親友であり、頼れる相棒のギタリストでもあるんだ!」
 千絃の肩を楽しそうに組んだ。
そして律の背負っているものがギターであることに初めて気づいた。
「あ!やっぱり、英子が話してたのって村雨くんのことだったんだ!」
「あれ?英子ちゃんとも友達なの?ってか村雨くんって硬いから律でいいよ。あ、それか、りちって呼んで」
「りち?」
 私は律が何故りちになるのか訳が分からず首を傾げた。
「ったく、お前ホントに馬鹿だな」
 威勢のいい声が聞こえた。
「律って『りつ』と別の読み方で『りち』って読めんだよ。だからりちって呼んでんだよ」
 ご丁寧にありがとうございます、とまたもや軽く会釈した。