ルイスさんへ想いを募らせていたら、誰かが近づいてくる足音が聴こえた。
「また、泣いてんの？」
　イタズラっ子のように口角を上げた千絃が立っていた。

「泣いてはいないよ。ただ､､､ルイスさんの歌に、感動してたの」
　少し口を尖らせ言い返す。
「うお！Over the Darkか！いいよなコレ！やっとルイスの他の曲も聴こうとしてるのか！」
「うん。でもまだこの曲しか聴けてない。けど､､､本当に綺麗な歌ばっかりだね」
「あぁ、何でこんな歌を生み出せるんだろうって思っちまうよな」
　しみじみと千絃も相槌を打つ。
私はそんな千絃に気になったことを訊く。
「この和訳のさ、フィクションくらいって、どういう意味？」
「あー、そういうのはさ、自分で自分なりの解釈をした方がいいぜ」
「自分なり？」
「あぁ。Seiさんの和訳は最高だけど解釈は聴いた人の数だけある。でも真実はルイスにだけしかわかんねぇ。それって、めちゃくちゃ良くね？」
　ホントに最高、とうっとりとした表情で私に言う。
「そっか。たくさん解釈があっていいんだね」
「音楽には正解なんてねぇからな！」
　得意そうに胸を張る。
そんな千絃に思わず吹き出しながら他におすすめの曲はある？と千絃に訊いた。。
「I Sing Your Song かな。ルイス・ハワードと言ったらコレって感じするからなぁ､､､。コレでデビューだもんな､､､」
「へぇ、この曲がデビュー曲だったんだ」
　和訳動画を探し当てながら頷く。
「そうそう！自然にこの曲聴いた時、泣きそうになった。で、思わず上向いたんだ。そしたら綺麗な空が見えて。歌詞に空の話が出てきたし余計泣けてくるし。､､､自然と空を見てしまう、そんな歌だ」
　初めてこの曲を聴いた時のことを思い出したのか、遠い目をして、感動を噛み締めるように空を見上げた。
「初めて空をじっくり見てさ、こんなに空って綺麗なんだなって。一瞬一瞬で移り変わっていく儚い美しさ、っていうのに感動した」
「そうなんだ､､､」
　私もつられて顔を上げる。
と、西の空が茜色や橙色に染まっているのに気付いた。
そして今日は雲が少ない。太陽が綺麗に沈む瞬間を見ることができそうな予感がした。