放課後、私はまたあの公園のベンチに座っていた。
今日の空も綺麗だな、と上を向いていた。
最近まで下しか向いてなかったのに、空の綺麗さを知ってから上を向くのが癖になってしまった。
 イヤホンを耳にさして、ルイスの歌声を聴く。
相変わらず Walking in the Night を聴いていたが、千絃との会話を思い出す。
「Seiさんの和訳動画、見てみるか」
 思い切って “Sei ルイス・ハワード 和訳”と検索し、動画を見つける。
Over the Darkという曲が他に人気で、聴いてみることにした。
「オーバー、、、ざ、だーく?で合ってるのかな?」
 英語が読めないので読み方が合っているのかが曖昧だがとりあえずOver the Darkという歌の再生ボタンをタップする。

『後悔ばかりが、心の中を渦巻いて、暗闇を抜ける道を見つけられない。
でも、きみがそこにいるのなら。
現実じゃなくて物語(フィクション)くらいhappy endで終わりたい。
きみがいるって信じて僕はこの暗闇を抜けようと思う。越えようと思う。
きみに会うために。
君に想いを伝えるために。
この暗闇を乗り越える。』

ルイスの曲はどの曲も『 You 』に宛てる手紙のような形式で、『 You 』への切なくとも優しい想いが溢れている歌詞とメロディらしい。
動画の説明欄にそう書いてあった。

その言葉通り、優しいルイスさんの声が耳に染み込むようだった。
しっとりとしたギターの伴奏とともに、透き通るような高音、何でも包み込んでくれるようなあたたかな低音を駆使して紡がれる音楽。
そして、私にというか、全世界の人々に寄り添う歌詞。
音楽と言葉がうまく噛み合わさるとこんなにも綺麗な歌になるんだ。
油断すれば涙が流れてきそうだった。
ルイスさんは何故こんなにも綺麗な曲を作ることができるんだろう。