「千絃はルイスのことが何で好きになったの?」
「あ?好きに理由いる?」
尖った声が返ってくる。
「ごめん、言い方悪かった。ルイスを好きになったきっかけってあるの?」
慌てて言い方を変える。
「ある」
短くそう頷き、鉄棒から颯爽と降り立つ。
そして何やらスマホを操作して私に突き出した。
「この動画を見て、好きになった。、、、憧れに、なった」
「動画、、、?」
「いいから見てみろ」
私にスマホを渡した。
私は受け取り、画面を見つめた。
画面に流れていたのはWalking in the Night の和訳動画だった。
Seiという人が出している。
星空の背景に、歌詞とその和訳が流れている。
私は紡がれる言葉に釘付けになった。
『夜に包まれながら、きみに伝える言葉を復唱しながら、僕は、僕の道を歩く。
闇夜という道を、夜明けまで、歩く。
きっと夜明けの先にきみがいるから。
僕は夜明けまで僕の道を少しずつ、進んでいく。
遠回りしながら、僕なりにゆっくり歩いていくから。
待ってて欲しい。
大好きなきみのために夜を歩く。
頑張ってきみに会いに行ければ、頑張ったねって僕を包み込んでくれるかな?
等身大の僕を愛して欲しい。
この暗闇を歩いた先の世界で待ってて欲しい』
寄り添うような、優しい歌詞だった。
きみへ伝えたい気持ちに溢れている、歌詞だった。
和訳の仕方も反響を呼んでいる。
コメント欄を開くと
『和訳の仕方が秀逸!』
『遠回りしながらっていう表現が素敵!』
などのコメントが並んでいた。
「私、、、歌詞の意味わからないまま聴いてて、今初めて意味を知ったんだ。すごいね、、、」
つぶやいた私は千絃にまたバカにされるかなと密かに覚悟した。
けれど返ってきたのは
「すごい、、、しか言えねぇよな」
だった。
「コメント欄にさ、『もう一度頑張ろうと勇気が持てました』とか『自分に自信が持てました』とか書いてあるんだ。しかもそのコメントに、『一緒に頑張ろう!』『自信持って!応援してる!』って返信があるんだ」
千絃の言葉に私は画面をスライドさせてコメントを探した。
「あ!あった!」
「赤の他人なのにさ、こんな人の繋がりまで作っちまうんだぜ。和訳した人も尊敬するし、こんな歌作っちまうルイスも尊敬する」
心底尊敬する、と千絃は空を見上げた。
「、、、」
私は黙って画面を見続けた。
ルイスの歌詞が私の中に流れてくるようだった。ルイスの優しくて切ない想いが私の中に入ってくるような感覚がした。
「え?!お、おい、、、?」
急に狼狽えたような千絃の声が聴こえた。
「泣いてんの、、、?」
千絃がそう続けた。
声が少しうわずっていて焦っているのがわかった。
「え?」
千絃の声で、私は顔にあたたかいものが流れているのに気づいた。
「あ、ごめん。なんか、わかんないけど、涙、出てきた。私に寄り添ってくれる、大丈夫だってそばにいてくれる歌詞だなって思って、、、。しかも、コメントの言葉も、本心を受け入れてくれるいい繋がりだなって思って、、、」
慌てて流れる涙を拭き取るが、一度溢れ出した涙は一向に止まる気配がない。
「風奏って、すげぇな。」
千絃が静かに言った。
「そっか。そりゃ、そうだ。風奏はすげぇから、綺麗な音を出せるんだ。」
何度もうんうんと頷いている千絃を見ると笑けてきた。
「すごい?」
眉を顰めながら訊くと
「あ?こっちの話」
と口角を上げて言った。
「俺さ、ホントに風奏のピアノ、すげぇと思うよ。バカだけど」
「え、、、?」
「びっくりした時、え、しか言わねぇじゃん。そういうとこがバカなんだよ」
軽い口調で続ける。
「ねぇ、、、私のこと、、、。やっぱり、いい。ごめん、忘れて」
言いかけた言葉を飲み込む。
また、ああ言われるに決まってる。
もう、思い出したくない。
「言い出しといて何もねぇのかよ。まぁいいけど。、、、てか雨結構降ってきたぞ。帰らなくていいのかよ?」
千絃が心配そうに顔を覗き込んだ。
辺りを見ると小雨だった雨粒が大きくなっている。
ハッキリと雨の音が聞こえる。
「ホントだ。じゃあ、私、帰るね」
慌ててカバン持って、立ち上がる。
「おう、またな」
「またね」
私は駅に向かって歩き出した。
「あ?好きに理由いる?」
尖った声が返ってくる。
「ごめん、言い方悪かった。ルイスを好きになったきっかけってあるの?」
慌てて言い方を変える。
「ある」
短くそう頷き、鉄棒から颯爽と降り立つ。
そして何やらスマホを操作して私に突き出した。
「この動画を見て、好きになった。、、、憧れに、なった」
「動画、、、?」
「いいから見てみろ」
私にスマホを渡した。
私は受け取り、画面を見つめた。
画面に流れていたのはWalking in the Night の和訳動画だった。
Seiという人が出している。
星空の背景に、歌詞とその和訳が流れている。
私は紡がれる言葉に釘付けになった。
『夜に包まれながら、きみに伝える言葉を復唱しながら、僕は、僕の道を歩く。
闇夜という道を、夜明けまで、歩く。
きっと夜明けの先にきみがいるから。
僕は夜明けまで僕の道を少しずつ、進んでいく。
遠回りしながら、僕なりにゆっくり歩いていくから。
待ってて欲しい。
大好きなきみのために夜を歩く。
頑張ってきみに会いに行ければ、頑張ったねって僕を包み込んでくれるかな?
等身大の僕を愛して欲しい。
この暗闇を歩いた先の世界で待ってて欲しい』
寄り添うような、優しい歌詞だった。
きみへ伝えたい気持ちに溢れている、歌詞だった。
和訳の仕方も反響を呼んでいる。
コメント欄を開くと
『和訳の仕方が秀逸!』
『遠回りしながらっていう表現が素敵!』
などのコメントが並んでいた。
「私、、、歌詞の意味わからないまま聴いてて、今初めて意味を知ったんだ。すごいね、、、」
つぶやいた私は千絃にまたバカにされるかなと密かに覚悟した。
けれど返ってきたのは
「すごい、、、しか言えねぇよな」
だった。
「コメント欄にさ、『もう一度頑張ろうと勇気が持てました』とか『自分に自信が持てました』とか書いてあるんだ。しかもそのコメントに、『一緒に頑張ろう!』『自信持って!応援してる!』って返信があるんだ」
千絃の言葉に私は画面をスライドさせてコメントを探した。
「あ!あった!」
「赤の他人なのにさ、こんな人の繋がりまで作っちまうんだぜ。和訳した人も尊敬するし、こんな歌作っちまうルイスも尊敬する」
心底尊敬する、と千絃は空を見上げた。
「、、、」
私は黙って画面を見続けた。
ルイスの歌詞が私の中に流れてくるようだった。ルイスの優しくて切ない想いが私の中に入ってくるような感覚がした。
「え?!お、おい、、、?」
急に狼狽えたような千絃の声が聴こえた。
「泣いてんの、、、?」
千絃がそう続けた。
声が少しうわずっていて焦っているのがわかった。
「え?」
千絃の声で、私は顔にあたたかいものが流れているのに気づいた。
「あ、ごめん。なんか、わかんないけど、涙、出てきた。私に寄り添ってくれる、大丈夫だってそばにいてくれる歌詞だなって思って、、、。しかも、コメントの言葉も、本心を受け入れてくれるいい繋がりだなって思って、、、」
慌てて流れる涙を拭き取るが、一度溢れ出した涙は一向に止まる気配がない。
「風奏って、すげぇな。」
千絃が静かに言った。
「そっか。そりゃ、そうだ。風奏はすげぇから、綺麗な音を出せるんだ。」
何度もうんうんと頷いている千絃を見ると笑けてきた。
「すごい?」
眉を顰めながら訊くと
「あ?こっちの話」
と口角を上げて言った。
「俺さ、ホントに風奏のピアノ、すげぇと思うよ。バカだけど」
「え、、、?」
「びっくりした時、え、しか言わねぇじゃん。そういうとこがバカなんだよ」
軽い口調で続ける。
「ねぇ、、、私のこと、、、。やっぱり、いい。ごめん、忘れて」
言いかけた言葉を飲み込む。
また、ああ言われるに決まってる。
もう、思い出したくない。
「言い出しといて何もねぇのかよ。まぁいいけど。、、、てか雨結構降ってきたぞ。帰らなくていいのかよ?」
千絃が心配そうに顔を覗き込んだ。
辺りを見ると小雨だった雨粒が大きくなっている。
ハッキリと雨の音が聞こえる。
「ホントだ。じゃあ、私、帰るね」
慌ててカバン持って、立ち上がる。
「おう、またな」
「またね」
私は駅に向かって歩き出した。



