俺は、自殺した。
 しんどかった。俺に期待して重荷を増やしていく親も、俺をバックとか装飾品としか思っていない女共にも、全部に対して。生きたくなかった。これ以上、しんどい思いをしてまで俺は生きたくなかった。
 人は言う。死んではいけないと。生きたくても生きれない人がいるんだと。だったら、俺の残りの命を生きたい誰かにあげてもいいと思った。
 人は汚いと思っていた。それは、死んで死神になった後もずっとそう思っていた。俺が余命宣言すると、誰もが俺に泣き縋る。『生きたい』と『死にたくない』と。その姿は、どこか生きたいんじゃなくて死ぬのが怖いだけのように見えていた。そして、どの人も俺のことを恨んでいた。
 そんな中だった。晴乃に出会ったのは。晴乃に余命宣言すると彼女は喚いたり、泣き叫んだりすることはなく、ただただ空を見上げた。だけど、実際に死ぬと生きたかったと、本性を出すと思っていた。死んですぐに天にはいけない。だから、その四十九日間に見せてくれると思った。だけど、彼女はずっとボーとしていた。そんな彼女を見て、ある案が頭に浮かび上がった。
「君がしたいことを最後にすれば?」
 天に行くまであと四日という時に、聞いてみた。すると、彼女は俺に付き合えと言い出した。俺はめんどくさいなと思いつつも、心の中で面白いことが見れるんじゃないかと期待していた。
 その期待は見事に的中した。それは、由季と出会ったことだった。由季は始めすべてに飽きているような、諦めているような顔をしていた。だけど、晴乃と話すにつれ表情が明るくなっていった。でも、俺は由季にあることを言っていなかった。
 由季があと数日ほどで死んでしまうことを。
 俺は思った。晴乃の真実を聞いたとき、由季は壊れてしまうんじゃないかって。由季はもうすぐ死ぬ。だけど、そんな気持ちのまま死んでほしくなかった。でも、晴乃の真実を知ったとき由季は「ずっと想っている」と言っていた。
 それを聞いて単純にすごいと思った。誰かをずっと想えることを。自分たちの運命をちゃんと受け止めている二人を。そんな二人を見ていたからこそを、俺は死神をやめようと思えた。そして、生まれ変わろうと思えたんだ。
 だから、俺は二人に幸せになってほしいと願った。二人なら、どんなにしんどいことも乗り越えてくれそうだと思った。二人を見て知った。誰かを想う人は綺麗だと、美しいと思った。そして、時に残酷だと思った。
 どうか、二人が幸せになれるように。柄にもなくそう神に祈った。