猫用のおやつを持って、2階の自分の部屋へと戻ると……。

「なぁ、小春。見てよ、これ」

「い、いつの間に仲良くなったの?」

そこには、楓くんの膝の上で丸くなっているもっちー。

「いや〜、それがさ、分かんないんだよ」

「えっ、えぇ?」

楓くんの言葉に耳を疑う。

「俺のこと匂いを嗅いできたと思ったら、気付いたらもっちーがここにいた」

気付いたら……なんて、そんな訳がない。

でも、仲良くなってくれて嬉しいと思う。

「楓くんのこと、信頼してる証だよ」

「へぇ〜、そうなんだ。ありがとな、もっちー」

優しく猫の頭を撫でる楓くん。

もっちーは、撫でられてとても嬉しそうに目を細めていた。

楓くんの隣に座って、微笑ましい光景を眺める。

「もっちーのふわふわとした感じ、小春に似てる」

「わ、私、手並みついてないよ」

「そうじゃなくてさ、雰囲気っていうの? 上手く説明できないけど、ふんわりとしして可愛らしい感じが小春にそっくり」

「そ、そうかな?」

「ほら、そういう笑顔になるところとかとくに」

そう言う楓くんは無邪気な笑みを浮かべていて、私は彼から目を離すことができなかった。

胸のドキドキは増すばかり。

私にとって楓くんは大切な人であり、多分友達以上と思える今日この頃。

ただ、この幸せな時間がずっと続けば良いなと思った。

でも、そう願えば願うほど私の気持ちと裏腹に現実はそんなに甘くなかった。