「小春はこんなにも話したい意志があるのに、それを分かってもらえないのってなんだか悔しいよな」
傷ついた心に彼の優しい言葉が染み渡る。
……楓くんだけだよ。
私のこと分かってくれる人は。
「先生やおばさんに俺まで腹が立ってきたよ」
楓くんの言葉に、私はだんだん目頭が熱くなる。
「どうして、周りに理解してもらえないんだろう? みんな同じ人間だけど、十人十色という言葉があるように、人それぞれでみんな違ってていいはずなのに」
「……っ」
楓くんの優しさに触れ、とうとう涙が堪え切れなくなった。
右目からつうっと零れる。
人前で泣いたのは初めてだ。
家族の前でも泣かないようにずっと我慢してたのに。
「これ使って」
楓くんはハンカチを渡してくれた。
……優しい。
優しすぎるよ。
楓くんに、どうしてもお礼を言いたい。
メッセージではなく、声で伝えたい。
そう思って、頑張って口を動かす。
「……」
なのに、どんなに声を絞り出そうとしてもなかなか出ない。
……やっぱり、私には無理なのかな。
そう諦めて俯こうとした次の瞬間。
「どういたしまして」
その言葉に驚いて、楓くんをまじまじと見る。
「あれ? “ありがとう”って言いたそうな顔してたけど違った?」
そう聞かれ、“違わない”というふうに首を横に振った。
どうして、楓くんには私の心の声が伝わるのだろう。
お母さんにも伝わったらいいのに……。


