目の前で起きた出来事に茫然とし、体も思考もフリーズしていると、弁当箱を持ったまま葉山くんがゆっくりと私に近づくなり、申し訳なさそうに眉を寄せた。
「……ごめん、星乃」
なんで……?
なんで、葉山くんが謝るの?
「俺がもっと購買から早く戻ってたら、お前の弁当無事だったかもしれないのに、ほんとごめんな」
葉山くんは、なにも悪くないのに。
悪いのは、私だよ?
こんなことなっているとは知らずに、のそのそと歩いていたんだから。
「それ、これと一緒に席に置いておくから」
葉山くんは、未だ私の手にある教科書と筆箱を取ると、私の席へと向かって歩いていく。
私は、ただただ彼のその後ろ姿を見つめた。
……ねぇ、葉山くん。
怖くないの?
さっき、みんなが見てたんだよ?
どうして、こんな私を庇ったの?
そう思うけれど、声にはならなかった。
「なぁ、屋上行かない?」
葉山くんは私の前にもう1度来るなり、そう言った。
「……」
返事もできずに、今もまだその場に固まったままの私。
「行こう、星乃」
葉山くんは、優しい口調で私を見つめる。
私は、恐る恐る小さく頷いた。


