朝のホームルームが終わり、授業の準備をしようと机の中に手を入れると、なにか紙が入っていることに気付いた。
取り出してみると、1枚のルーズリーフ。
そこに大きな文字で書かれた言葉。
『消えろ』
私だって、消えれるのなら今すぐにでも消えたいよ。
でも、どうして、こんなこと言われなきゃいけないのだろう。
話せないだけで……。
上手く体を動かすことができないだけで……。
そこで、気付いた。
この世界は、みんなとは少し違う私をそう簡単に受け入れてもらえないってことに。
そう結論に至っては、ますますこんな自分が嫌になってくるし、やっぱり消えたい。
「どうした?」
突然、声をかけられて体がビクッと反応する。
声の主は、葉山くんだった。
「なにそれ?」
慌てて紙を隠したけど、もう見られてしまったあとだ。
「誰にやられた?」
そんなの葉山くんには関係ないじゃん。
それなのに、なんで毎日私に話しかけてくるの?
朝、学校に来たら「おはよう」、帰る時は「また明日」と私に声を掛ける葉山くん。
その度に、私はスルーしてるのに、葉山くんは気にするどころか次の日になればまた「おはよう」と挨拶をする。
それに、最近では英語の授業の英単語の出し合いもまともにできてないのに。
今まで唯一の意思表示、頷きや首振りも緘動でできなくなってしまったのだ。
「星乃?」
私の名前を呼ぶ葉山くんに、私はそっぽを向いた。
お願いだから、私に話しかけてこないでよ。


