しばらくしないうちに、ホームルームが終わって先生が教室を出た途端、また一気に賑やかになった。
「なぁ、葉山! 手話で教えてほしい単語があるんだけど、こっち来てくれ」
仲良い人同士でグループを作っていた男子たちが楓くんを呼んでいた。
「ちょっと、行ってくる」
隣に座っていた楓くんは私に一言伝えて、そのグループのところへ向かって行った。
話せない私のために、みんなは手話を覚えようとしてくれて、それだけでますます嬉しい気持ちになるし、手話を教えている楓くんもなんだか楽しそうな表情をしている。
遠くからその光景を眺めていると、唯花ちゃんが私のところに来てくれた。
「春ちゃん、春ちゃん!」
どうやら、唯花ちゃんは“小春ちゃん”から“春ちゃん”呼びに変えたらしい。
「春ちゃんが学校に来てくれて嬉しいよ! もう、てっきり来てくれないかと心配になってたんだから」
『ごめんね。でも、ありがとう、唯花ちゃん』
今では、すんなりと手を動かせることができた。
『ところで、唯花ちゃんに1つ聞きたいことがあるんだけど……』
「え〜なになに?」
さっきから不思議に思っていたことを唯花ちゃんに訊ねてみた。


