「そういえばさ、星乃さんのあだ名決めようよ!」

とある女子が提案した。

あまり関わったことはないけれど、こうやって考えてくれること自体嬉しく思うし、それに賛同してくれるみんなも優しい。

「いいねー! なにがいいかな?」

「星乃さんに似合いそうなあだ名にしたいな」

「それでいて、呼びやすいのがいいよね!」

私のために、みんなはいろんな案を出してくれた。

最終的に、下の名前“小春”をとって、“春ちゃん”に決まった。

高2になりたての頃は、あんなに1人ぽつりと浮いていたのに、今ではクラスの一員になれて、言葉に言い表せられないぐらいとても嬉しい気持ちになる。

そこへ、学校が始まったことを知らせるチャイムが教室に鳴り響いた。

それと同時に難波先生が教室に入って来て、ドクンと心臓が嫌な音を立てた。

「みんなここに集まってなにしてるんだ?」

「あっ、難波先生! 春ちゃん来てくれたよ!」

クラスメイトが言った言葉に、首を傾げる難波先生。

「春ちゃん……?」

事を知らない先生は聞き慣れないあだ名に不思議に思って、未だドアの周辺で群がっている人々の中から、そのあだ名となる名前がついた人物を探す。

その人物は私で、先生から来るであろう視線から逃げるかのように下を向いた。

まだ、私のこと理解してくれているのか分からない人が若干1名いる。

昨日のこともあってか私は無意識のうちに手を強く握りしめて、この場が過ぎ去るのをじっと待つ。