意を決して、ドアノブを捻って、目の前の扉をゆっくりと開けた。
そこには、静かに涙を流しているお母さんがいた。
部屋から出て来た私に驚いたものの、すぐに笑顔になって、涙をそのままに優しい声で私を呼ぶ。
「小春」
「……お母さん」
呼び返したものの、なにから話そう。
伝えたいことはたくさんあるのに、上手く言葉にまとまらずにいるとお母さんは言った。
「ありがとう、小春。勇気踏み出してくれて」
優しい笑顔で伝えてくれるお母さん。
「お母さん、さっきはありがとう。助けてくれて」
感謝の気持ちを伝えると、お母さんは優しく微笑んで私を見る。
「ううん! お母さんにできることをしただけだよ」
その言葉にますます嬉しくなっていると、階段を登ってくる音が聞こえたと思えば、私たちのところに現れたのは仕事から帰ってきたお父さんだった。
「小春」
お父さんは、部屋から出た私を見るなり、嬉しそうに口元を緩ませた。


