「先生、もうやめてください」

突如、私に救いの声が降ってきた。

お母さん……?

「娘は今、物凄く苦しんでいるんです。だから、今はそっとしてあげてくれませんか?」

お母さん、どうして?

以前までは、先生の味方で話せない私を責めていたのに。

「それじゃあ、放ったらかしにしろってことですか?」

「いいえ。娘は、話すのが難しいんですが、それでも自分なりに努力して頑張ってきたんです。頑張り過ぎちゃっただけなんです。だから、今の娘には十分な休養が必要なんです」

なんで、なんで?

今は、私を庇ってくれるの?

不登校なのに、それは“十分な休養”だって優しい言葉をかけてくれるの?

今までのお母さんではあり得なかったことで、私はその心境の変化についていけてない。

「でも、このままだと後々進路に影響してしまいますよ。お母さんは、それでもいいんですか?」

先生の問いに、お母さんはきっぱりと言った。

「それでもいいです」

意外な言葉にびっくりしてしまう。

「小春になにがあろうと私が守ります」

お母さん……。

あんなに苦しかった心がスッと引いて、さっきとは違った涙が溢れる。

「先生、すみませんが今日のところは帰って下さい」

「……分りました。また来ます」

「来なくて結構です! 娘の気持ちが分からない人には、娘に会わせる権利はありません!」

お母さんは私のために怒ってくれた。

「……失礼、いたしました」

お母さんの言葉に追いやられて先生は家を出て行った。