学校が終わり、家に帰って部屋で宿題を済ませていると、突如インターホンが鳴った。

お母さんが玄関に向かった音がしたが、その数秒後。

「ちょっと、迷惑なので帰って下さい!」

お母さんの叫び声が聞こえた。

何事かと思い、2階からこっそり玄関の様子を覗くと、そこには楓くんのおばさんがいるのが見えた。

お母さんは中に入れさせまいとドアを閉めようとしているが、おばさんは開けようと力を込めていて互いにドアの引っ張り合いをしていた。

やがて、おばさんの方が勝ち、ドアを開けて玄関に入るなり、バッグからスケッチブックを取り出すとお母さんに見せた。

そこには、マジックペンで書かれた文字。

【昨日は、本当に申し訳ございませんでした】

深く頭を下げた後、おばさんはペラっと次のページを捲った。

【私が耳が聞こえないが故に、お母様にご迷惑をかけてしまいすみませんでした】

おばさんは涙目でまた深く頭を下げて、お母さんは頭を抱えていた。

「もう勘弁してよ……」

お母さんはそう言葉を漏らした。

だけど、おばさんには聞こえていない。

お母さんの表情からまだ怒っていると察したのかおばさんはマジックペンを取り出して、ページを捲って文字を書いた。

【どうか許して下さるまで帰りません】

次の瞬間、おばさんはその場に正座するなり地面に両手をついて深々と頭を下げた。

土下座までして謝罪するおばさんに私は言葉を失ってしまう。

おばさん、そこまでしなくていいのに……。