「それに、ごめんな、小春。俺ら家族のことで、小春にまで嫌な思いさせてしまって」

その言葉に必死に首を横に振った。

『楓くん、謝らないで。私がお母さんにおばさんの耳のこと伝えてなかったのも悪かったから』

「こは、る……」

私の名前をぽつりと言った楓くんの声はとても弱々しかった。

『お母さんに分かってもらえるまで、また今日もちゃんと説明するよ』

すると、今度はなぜか楓くんが首を横に振った。

「無理して説明しなくていいよ」

『どうして?』

「それで、また小春が傷つくのが嫌だから」

『楓くん、私なら大丈夫だよ』

「大丈夫なわけないだろ?」

そう言って、楓くんは私の右頬にそっと手を添えるなり、目元に触れた。

そこは、昨日、泣き過ぎたあまり目がちょっとだけ腫れている。

今朝、氷水で冷やしたものの、おまけに寝不足のせいでクマもできていた。

「本当にごめんな、小春……」

私がたくさん泣いたこと、眠れていないことを楓くんは察して申し訳なさそうに眉を下げた。