とは上手くいかず、私は思わず砂利道にしゃがみ込んだ。

「ちょっと、結芽、大丈夫?」

昔、家族で来た思い出の場所に碧くんを連れて行きたいのに、言い出しっぺの私がヘトヘトになってどうするの?

登り始めてまだ30分も経っていないのに。

「……ハァ……ハァ」

息が上がり呼吸が上手く整わない私を碧くんは寄り添うように腰を屈めるなり優しく背中を摩ってくれた。

「結芽、ほんと大丈夫?」

休憩するのはこれで3回目だから、碧くんが心配を通り越してまるでお母さんみたいになるのも無理もない。

「山頂行くのは今度にしてもう戻らない?」

「……ううん。どうしても、今日がいいの」

「でも、結芽が心配だよ」

「じゃあ、おぶってくれる?」

自分で言っておきながら恥ずかしくて碧くんを見れずにいると、「いいよ。ほら乗って」と背中を向けてくれるものだから思わずクスッと笑った。

「結芽?」

碧くんが不思議そうに振り返る。

「冗談だよ、碧くん。今日が何の日か忘れちゃった?」

「今日って、4月1日。あっ、エイプリルフールだ」

「碧くん、まんまと騙されたね」

「あはは!」

顔をくしゃりとして笑った碧くんは、汗をかいていないどころかまだまだ余裕そうで「本当に結芽をおぶってもいいよ」と言ってきて私の冗談すらもまたもや本当に実行しようとしてくるものだから丁寧に断った。

「碧くん、ありがとう。でも大丈夫だよ。碧くんのおかげで元気でたから」

「そう? じゃあ、もうすぐ山頂みたいだから頑張ろう」

手を差し伸べてくれて、こんなにも優しくて純粋で素敵な彼氏に出逢えて幸せ者だなと思いながら「うん!」と彼の大きな手に自分の手を重ねては立ち上がった。