明日、通院先である福岡の病院に入院する。
もう長崎には多分戻って来れない。
病室という名の部屋に閉じ込められて、病院から出ることは許されない。
終わりが見えない、辛くて壮絶な闘病生活。
だんだん弱くなっていく体。
介助なしではなにもできなくなって、最終的には起き上がることもできなくなってしまう。
話すこともままらなくなるかもしれない。
タイムリミットは、3ヶ月。
いや、3ヶ月以内に死んでしまう可能性も十分ある。
そんなことを碧くんに伝えたら、とても悲しんでしまうに気がいない。
お見舞いに来てくれては、最後まで私と一緒にいることを選ぶと思う。
でも、そんなの私が望まない。
長崎から福岡まで高速バスで約2時間半。
会おうと思えば会える距離だが、高校生の私たちにとってはそう簡単に行ける距離ではない。
碧くんに負担をかけたくないし、会いに来てくれても治療で苦しむ自分の姿を彼に見せたくない。
だから、海外に行くと嘘をついた。
きみはピュア過ぎてどんなこともすぐに信じてくれる。
その優しさを利用して、嘘に嘘をたくさん重ねた。
その結果、きみを傷つけてしまったけれど、別れることよりも身近な人がいなくなってしまう方が何倍も辛いこと。
去年、長年育ててきた愛犬が亡くなってしまった碧くんはその辛さが分かるでしょ?
もし私に最期の日が来たら、碧くんはたくさん涙を流して悲しみに暮れるに違いない。
だから、碧くん。
たとえ私が死んでも、きみは知らないでいて。
海外で上手くやっているんだって、そう思っていて。
私のことを思って涙を流すのは今日までにして、明日からは前を向いてこれからの人生を歩んでね。
私、きみに出逢えて本当に幸せだったよ。
今までありがとう。
さよなら、碧くん。


