私が硬い顔をしていたのか、旦那様から少し心配そうに尋ねられた。

「……はい」

綱木長官が恐ろしい方だったらという不安もあるが、それ以上に旦那様との結婚は認めない、出ていけと言われたら私は居場所を失ってしまう。

「なに、恐れることなどない。
ただの好々爺だ」

「そうですよ、しょっちゅう隠れて休憩していて、秘書官がいつも嘆いているくらいです」

「はぁ……?」

旦那様の言葉を菰野さんがさらに補足してくれたが、まったく想像がつかない。
というか、そんな人がエリート部隊の長官だなんていうのがすでに、信じられなかった。

あれこれ想像を巡らせているうちに、異能特別部隊の本部に着いていた。

「ここが……」

レンガ造り二階建ての立派な建物が目の前に広がっている。
いくつかの棟に別れているのか、奥には木造の建物が見えた。

「ああ、あれか。
厩舎だ」

私がそれを見ているのに気づいたのか、旦那様が説明してくれる。
失念していたが軍人さんはよく馬に乗っている。
あそこで飼っているのだろう。

菰野さんと旦那様に連れられて建物に入る。

「こっちだ」