ヤツの首を私たちの祝言の祝いに添えるのだとか言っていたが、それはやめていただきたい。

実家での生活が嘘のように、ここでは穏やかな時間が流れている。
おかげでいまだに私はもう死んでいて、天国にでもいるのではないかと疑っているくらいだ。


その日は朝餉のあと、ようやく仕立て上がった着物を着せてもらった。
普段着なら自分で着るが、今日は旦那様のご主人様である、綱木長官にご挨拶へ行く。
粗相のないようにしなければいけないので、綺麗に着付けてもらった。

「どう、ですか……?」

準備が済み、リビングで待っていた旦那様と菰野さんの前に出る。

「やつがれの見立てに間違いはなかったな」

満足げに旦那様が頷く。
今日はあの買い物で購入し、この日のために仕立てた淡い水色で裾に桜を散らした着物を着た。

「ほんと、あの妙ちきりんな着物とは月とすっぽんですよ」

菰野さんも頷いているが妙ちきりんな着物とはここに連れてこられた日、着ていた紫乃のお下がりだろう。
それにあまりのおかしさにあの日、旦那様も「ちんどん屋」
と言っていた。

「これなら綱木長官に会わせられますか」

「うん」